おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

逃げっぱなし (20世紀少年 第798回)

 世間話から始めます。先週、拙宅すぐそばで交通違反の摘発を二日続けてみた。いずれも大通り沿いの出来事で、最初の件はすでに警察に止められたタクシーが路肩に停められており、初老の運転手が路上で若い警察官相手に土下座して謝ってみえる横を通り過ぎた。

 近ごろ土下座というのはテレビ以外で見たことがない。ケンヂの絵以来ではないか。警官も困っている様子だった。公道上で土下座というのも尋常な謝り方ではない。何が起きたか知らないが事故ではなさそうで、このポイントを喪うと彼は免停になるのかもしれない。コンビニを焼かれたケンヂ同様、明日から商売にならない。上手く解決できただろうか。


 次はその翌日の夕方、同じ通りの歩道に立っていた二人の制服警察官が、私の目の前で二人一緒に「あっ」と大声で叫んだ。見れば我らの目の前、赤信号の横断歩道を堂々と乗用車が走り抜けていく。ブレーキを踏むどころか加速した。夕方は歩行者が見づらい。これは危険である。

 これには驚いたが、更に驚いたことに走り去る車を、警官お二人が自転車で追いかけ始めた。ドンキー的ではないか。警視庁の自転車追撃チームも信号無視で、大通りを車めがけて斜めに反対車線まで最短距離を走る。道路交通法違反です。悪の車は悪運尽きて、次の信号も赤のまま。信号待ちの車列に行く手を阻まれて御用となった。この辺は交通事故も多い。野次馬すら慣れきっていて集まりが悪い。


 雑談おわり。上巻第3話、「俺たちの旗」に入ります。最初に登場するのはケロヨンだ。円盤墜落の直後の現場。これは後の展開で分かるが、オッチョが撃墜したほうだ。ケロヨン親子がワクチンを打ってまわり、お医者さんも連れて来て大忙し。外科医らしきドクターはさすが専門家とあって早速患者を診つつ、本当にこのワクチンは大丈夫なのかと我が身の心配まで同時にしているのであった。

 「てやんでえ」と丁寧に挨拶を返したケロヨンは、「えらーい先生」のキリコさんが造ったんだから心配ご無用と、説得力には欠けるが迫力は充分の回答で医師の懸念を振り払い、次は母子の救出にあたる。こちらもさすが日本の母、「私よりもその子に」と幼い息子の生命と安全を優先。


 心配いらねえよ(しんぺえ、と読む)とケロヨンは威張る。先ほど医師に対しては「大量生産に入った」と言ったが、ここでは「ワクチンならまだまだある」と言っている。もう「あんなクソウィルス」は怖がることは無いと断言。キリコ先生のマネで、「人類の勝ちだ」と勝利宣言までしている。少し気が早いようにも思うが江戸の蕎麦屋だ。

 そこにやってきたのは、医者はいないかと叫ぶ氏木氏に、同行者のマルオとケンヂであった。もう片方の墜落地点なら医者が見つかるかもしれないというのは適切な判断でろう。そしてトラックの荷台には重症患者のサダキヨが横たわっているそうだ。

 ここでは緊急事態だから他に仕方がないが、サダキヨほどの重傷では、通常、車で運ぶのはよくないでしょうね。”ともだち”の亡骸がどうなっかたかは、描かれていないので分からない。ケンヂが雑に扱うとも思えないが...。


 ケロヨンは一目見て、帽子・黒メガネ・蓬髪・ギター状の武器らしきものを携帯中という、かつての手配写真より余ほどテロリストらしくなっている相手がケンヂだと分かって、目に涙を浮かべている。彼は2000年に受信したFAXの話を始めた。あのときマルオほか商店街の寄り合いは集合したのに、ケロヨンはレディ・ファーストで仲間に入らなかったのだ。

 「逃げっぱなしで...」とその後のことまで悔いるケロヨンの肩に手をかけて、「俺も逃げっぱなしだった」とケンヂは語る。過去形。読者はケロヨンの逃げっぱなしも過去形であることを知っている。ニューメキシコでは、かつて家が近所でケンヂの姉を知っていたから運が良かった。そのあとは行動力と度胸でカエル帝国の勝利。

 
 ところで、この円盤やオッチョが撃ち落した円盤に、「クソウィルス」が本当に載せられてれていたのか分からない。映画化されたときは派手に犠牲者が出ていたが、漫画では主犯の男が押しつぶされただけで、血を吐くような被害は出ていない。

 ウィルス搭載だったとしたら、感染者の体内で発病に至るまでウィルスが増殖するのに必要な時間、すなわち潜伏期間中に後から注射したキリコの最終ワクチンが充分な抗体を形成しないと間に合わない。間一髪の勝負である。しかも、予防接種を受けたものは、かつてキリコが苦しんだのと同様の副作用に耐えなければならないはずだ。

 まあ、人類の勝ちだから上手くいくだろう。このあと一行は、おそらくサダキヨの手当を医師にお任せして、常盤荘のそばで立ちっぱなしになっていたはずの巨大ロボットの方角に向かっている。そこでも同様にワクチン接種が必要と考えてのことだろうか。それとも会いたい奴がいそうだからか、たぶん両方だろう。



(この項おわり)







オシロイバナ。甘いものが希少品だった子供のころは、この花を引きちぎって蜜を吸っていました。
(2013年9月20日撮影)









 そうだ! 嬉しいんだ 生きる喜び
 たとえ胸の傷が痛んでも

 そうだ! 恐れないで みんなの為に
 愛と勇気だけが友達さ


       史上最弱の正義の味方、アンパンマンより






 























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