何らかの方法で、首都高や歩道橋というハードルを乗り越えた巨大ロボットは、そのまま市ヶ谷方面に直行したと思われる。なぜならば、ロボットが新宿に行くためには、よほど遠回りしない限り、外堀か神田川を越えなくてはならず、そのためには靖国通りを進んで市ヶ谷橋を渡るしかないからだ。
水の中を歩くというのは、あまり現実的な想像ではない。神田川の渓谷は深いし(御茶ノ水や市ヶ谷の坂道は、大都会のど真ん中とは思えない傾斜である)、外堀も本来の存在目的からして当然だが深い。あの体型の巨大ロボットが、V字型の谷を無事、降りて登るのは至難であろう。
ところが、別の問題が残る。靖国通りは、神保町あたりでは白山通りと同じく6車線なのだが、東に行く途中で5車線に減り、さらに市ヶ谷橋(写真では見えにくいが)では4車線である。巨大ロボットの両足の間隔は、小学館前では6車線でさえ足りなかったのに、4車線の(しかも車線の幅は狭いはず)の橋を渡れるであろうか。
もしも人間の脚のように、内股歩きで平均台を渡るように歩けるのであれば大丈夫だが、見た感じではそれほど柔軟な構造になってはいない。片脚でケンケン歩きができれば渡れるが、キャタピラーを持ちあげることはできないとオッチョは説明している。やはり、いざとなったら空を飛ぶのであろうか。ついに迷宮入りとなった。
市ヶ谷橋を渡ると、やがて大きなY字路に突き当たる。右はそのまま靖国通り。左は四ツ谷経由の新宿通りである。巨大ロボットがどちらを進んだのか、今の私にはよく分からないままだ。新宿通りは新宿南口に出るため、第7巻と第8巻の展開からすると、こちらの方が都合がよい。
ところが、新宿通りは甲州街道と分岐すると狭くなるし、甲州街道も御苑の脇を通過する際、長い長い新宿御苑トンネルを抜ける。これを通過せよというのは、巨大ロボットには無理難題というものであろう。道からそれて、御苑を歩いて横切るという手はあるが。
他方、靖国通りを直進して大ガードにぶつかる前に、新宿駅手前のどこかで左折して甲州街道に渡れば南口に出ることはできる。実際、地下では都営新宿線が、そのように走っている。これが一番、蓋然性が高いルートであると思う。
ただし、この経路は市ヶ谷を過ぎたところで、防衛省の正面玄関前を通過するため、極めてリスクが高い。103ページには取材のため防衛省に殺到した報道陣が描かれているが、ここをロボットが通過したなら、そろって命を落としたに違いない。さて、地理の話題はこの辺でやめて、ケンヂたちの動向に戻ろう。
(この稿おわり)
近所で見かけた花。色とりどり。(2011年10月31日撮影)