落合長治氏
「遠藤氏と私がロボットの真下に潜入し、その内部構造を見上げたところ、それはロボットと呼ぶにはあまりにお粗末な代物でした。その中身は鉄骨とボルトばかりの単純な骨組みで、すだれのごとく垂れ下がった布きれは、安普請を覆い隠すためのものでした。」
「二足歩行に見えた脚部も、実際はキャタピラを交互に進めているだけで、足音に聞こえたものは、片足ごとにキャタピラを地面に固定するため、膝から下のカバーの部分が地面に落ちる音だったのです。巨大ロボットの本体と思われていた部分はただの大きな気球で、シュウシュウという音は、布の裂け口から窒素ガスが漏れ出す音に過ぎませんでした。」
遠藤健児氏
「私は落合氏に、まるで飛行船だという感想を述べざるを得ませんでした。こんなものは、俺たちの空想した未来ではないという激しい怒りが湧きました。上の方に操縦席らしいものが見えました。登っていくと、鉄骨も配線もむき出しのままで、風船を載せてぼろ雑巾を引きずっているだけです。」
「思わず私は、こんなもの、俺はロボットと呼ばないと叫びました。うすっぺらな、偽物に過ぎません。トランシーバーに入った落合氏からの緊急連絡によると、ラジオの報道では、この偽ロボットの上部に放射能マークがあり、動力源は原子力かもしれないとのことでしたが、こんなガラクタに原子力など使っているはずはありません。」
解説
両氏の証言によれば、鋼鉄のような材質かと思われた巨大ロボットの頭部は、実際には窒素ガスを詰め込んだだけの布でできた風船に過ぎないことが分かりました。これでは、靖国通りを通過する際に、首都高の高架や歩道橋を破壊しながら前進するのは不可能と思われ、この点についての疑問は解決しません。
他方、第4巻の最後のページで、遠藤氏と落合氏が初めて、この偽ロボットを初めて実見した際、消えていく偽ロボットの形状が奇妙に歪みながらも足音が聞こえていた理由は、キャタピラーで移動しつつ、地下道が狭いため頭部の上か横がつかえるなどの理由により、窒素ガスを抜きながら進んだ可能性があります。
(この稿おわり)
この日は富士山が見えなかった富士見坂の黄昏。
(2011年11月17日撮影)