おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ロボット会議     (20世紀少年 129回)

 ここ3年間のケンヂの苦労話を聞いて、オッチョは「”よげんの書”にしたがって、行動してみたってわけか」と応じてケンヂも同意しているが、正確にいえば「よげんの書」が実現しないように行動してみたってわけだ。

 ケンヂは2000年の大みそかまで時間が無いと危惧しつつ、巨大ロボットについては「まさかこんなもの、実際につくれるとは思わないが」と楽観しようとするのだが、オッチョの反論はすさまじい内容であった。「いや。俺は写真を見た。それはもう完成しているぞ」。

 その次のページには、「それ」を見上げて「これなら、ともだちも喜ばれるでしょう」と悦に入っている万丈目と、「約束は守った。早く娘に会わせてくれ」と求める敷島教授が描かれている。


 続く第4巻第9話の「ロボット会議」は、時を遡って1997年、敷島教授が娘を奪われて失踪した直後か。巨大ロボットの設計についての会議が行われている。ここに集まっている連中は、これまで描かれていたサークル活動的な集まりに出ているニヤけた顔の若者たちとは違い、スーツにネクタイの中高年が中心となっている。

 彼らが、この時点での”ともだち一派”の主だった構成員なのだろう。これから3年ほど経った2001年の国連において、人類の恩人として表彰された9名の顔写真の絵が第13巻の50ページに出て来る。

 そのうち、すでに登場した万丈目、諸星さんを殺した長髪の優男、敷島教授の娘、刑事のヤマさん、税関でユキジの上司だった男を除く4名は、このロボット会議に初めて登場する。


 国連に表彰された9名は、全員、ともだちが殺された2015年が明けた翌年の対策会議にも出席しているのだから、不動のメンバーと言ってよかろう。

 このうち、会議の席上で、自分の世代としてはロボットはリモコンで動かしたいと意見を述べている男は小向興三、2016年には民友党の幹事長を勤めていたが、上記の対策会議の直後におそらく粛正により急死。

 また、システムエンジニアと名乗り、おもちゃのロボットの腕を武器として飛ばし、敷島教授を怒らせている男は西岡豊、小向と同じ運命をたどった。なお、西岡の活動歴は古く、第18巻の190ページに、万丈目と共に初期の”ともだち”をステージ上でワイヤーを使って釣り上げる黒子の役割を担っている。


 顔ぶれの話はこのくらいにして、肝心のロボットだが敷島教授以外は全くのど素人で、しかも、大きさ、形体、操縦方法などについて各自が勝手な意見を述べるばかり。会議は踊る、されど進まず、万丈目はともだちの意見を訊くことにした。すると、操縦席とリモコンの両方を設置したらよいという、如何にも日本的な調整案が出てきて決着した。

 さらに、万丈目によれば、「動力はぜひとも原子力でいきたいと」述べたらしい。この提案は大喝采で迎えられた。知らないな、原子力の怖さを。いや、知っていたら、彼らのテロは原発も標的にしたかもしれないか。


 敷島教授も呆れて席を立つが、万丈目は「協力していただけないと、娘さんは永遠に帰らないんですが」と脅迫している。かくて教授もやむなく協力したのだが、はたして、最後まで彼女が父のもとに帰った形跡がないな。

 娘がどこに就職したか知っていたら、2000年時点で「会わせてくれ」などとは願わなかっただろう。その職場が、ロボット会議のすぐ後に出て来る。この辺りの話のつなげ方の上手さよ。


(この稿おわり)



今どき珍しいテレフォン・カードの券売機発見。(2011年8月26日撮影)