おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

21世紀!! の国連    (20世紀少年 第233回)

 第8巻、カンナと蝶野刑事が新宿でご来光を拝んだ場面の次は、第4話の「お迎え」なのだが、コイズミにお迎えが来るエピソードの前に、国連の表彰式のシーンが出てくる。これと同じものをすでに第1巻の冒頭で見た。そして、「21世紀少年」の下巻にも、そっくり同じものが出てくる。

 表彰されている人々は、第1巻では不明、第8巻では万丈目ほか”ともだち”一派の幹部、下巻ではヨシツネほか20世紀少年である。三つとも、司会者の顔も、紹介の文言も、ネクタイの柄まで同じ。第8巻の絵は何年のことか書いてないのだが、後述するとおり2001年である。下巻は”ともだち暦”3年か、それ以降。そして第1巻は不明。


 本筋に関係ないし、どうでも良いことだが、気になるものは見捨てられないのが、このブログです。第8巻と下巻の間には十数年に近い年月が流れているはず。国連のおじさんは不老の人か。ともあれ、第1巻と第8巻は、「ズンズン」という足音を響かせて歩いている4人の男のスラックスが同じ柄なので、両者が同じ場面かと思ったのだが、偶然にも下巻でコンチやケロヨンたちが同じ柄を揃えているから紛らわしい。

 違いは結局、「ズンズン」だけなのだ。下巻ではヨシツネがズンズン歩けず、後がつかえているので登場の仕方は景気が悪い。したがって、第1巻冒頭は、21世紀早々の万丈目たちの表彰式だろう。ところで、第13巻の50ページに、2015年、フクベエの死を受けて幹部が集まるシーンがあり、その部屋に「2001年の国連表彰」の写真が飾ってある。第8巻と同じアングル、同じ顔ぶれ。


 この9人は、2001年から2015年のこの時点まで、幹部として不動のメンバーだったと考えて良かろう。このうち、万丈目、諸星さんを殺した長髪の優男、ヤマさん、ユキジの税関時代の上司、敷島教授の娘を除いた4名は、1997年のロボット会議に参加しているので、万丈目ともども古参の幹部であることがわかる。

 では逆に、この5人の古株以外は、いかなる論功行賞により出世したのだろうか。敷島教授の娘は「パパイヤ天国」の源氏名レナのときケンヂを騙して、優男に”ともだち”もお喜びになるだろうなどと言われていたが、これだけで新参者の若い娘が大きな組織の幹部クラスにはなれまい。


 やくざな商売において、たいした才能も無い女が急に出世するとしたら、男がらみと考えても良い。第13巻の上記の場面では、彼女と優男の会話から、彼女の旦那が総裁選に勝てば、「ファースト・レディ」になる見込みであることがわかる。この総裁候補は、誰なのか今の私のには分からない。

 第12巻、2014年に春波夫さんと爆弾男と化したマルオが、”ともだち”を表敬する際に、小泉の純ちゃんに似た「首相」と摺れ違いざま挨拶を交わしているシーンがある。少なくとも2014年まで、友民党は依然として連立与党ではあるが、首相は別の第一党から選出されていたのだろう。


 その第一党の総裁選に出るのが、敷島教授の娘の夫である可能性はある。ただし2001年の国連表彰のときに彼女はまだ若い。敷島ゼミ生の証言によれば、1995年に彼女は高校生だったのだから、二十代早々で幹部になったことになる。そのときすでに結婚していたとしたら、実力のある政治家との「年の差婚」か? 可能性はあるがやや不自然な気もするな。

 彼女の父親は、娘が人質になったと信じてロボットの設計に協力したのだが、彼女は1997年には、とっくに”ともだち”の信者になっているので、むしろ人質になってしまったのは敷島教授の方だな。彼女の存在自体が、教授を引きずりこんだという貢献にはなったが、それでもまだ実績不足ではないか。国連表彰のときは、紅一点の花飾りに選ばれただけか?


 結論が出ない。敷島教授の娘は、最後の最後まで信者だった数少ない凶悪強烈な信念の持ち主であった。ここでは”ともだち”との間で何か怪しげなことがあったという通俗的な勘ぐりをするにとどめ、今回も申し送り事項を増やしてしまおう。長くなったので、長髪の優男やチョーさんについては次回にします。


(この稿おわり)



21世紀少年」上巻第4話の冒頭。
ケンヂとユキジが、ファースト・キスに失敗した場所(推定)。
(2011年12月11日撮影)