おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

タイム・カプセル     (20世紀少年 第41回)

 ともだちマークは、ケンヂの生活をかき乱し始めた。それは酒の配達先である敷島教授の自宅に落書きされ、ドンキーからの手紙に同封され、お茶の水工科大学で学生たちのシャツにプリントされ、そしてドンキーの元教え子だったマサオも、それが何なのか良く知っている様子である。
 
 そして関係者の話の随所に、ともだちという言葉が出て来るのだが、ケンヂの耳には普通名詞の「友達」としか聞こえていない。マサオに「あと一歩」と言われているが、実際にケンヂがそこに至るまでには、まだ幾つかの事件が起きて、何人かの死者が出ることになる。


 さて、「明日、また、デュッセルドルフに、とばされちまう」モンちゃんのために、居酒屋つぼ八において、ケロヨン、マルオ、ヨシツネも参加して同級生の飲み会が開催されるのだが、ケンヂは心ここにあらずの体である。ドンキーから送られたマークを見せながら「何かの秘密結社」のマークなのではと提議するのだが、大爆笑を買うのみ。

 もっとも、それをきっかけに話が昔の秘密基地に及ぶことになり、そこで再びモンちゃんの記憶力がモノを言うことになる。基地の封鎖に伴い、何かを埋めたことを彼が思い出したのだ。もっとも、ケンヂを含め他の連中は全く何も覚えていないのだが。モンちゃんは行動の人でもある。全員を引き連れて基地のあった場所に向かう。


 かつての少年どもの夢のあとは、灯りが煌々と燈る低層のマンションになっていた。しかし不屈のモンちゃんは、それを木の下に埋めたことまで思い出す。ケヤキのような高木が立っている。みんなで掘ったところ、とうとうマルオが缶を掘り出した。ともだちマークがフタに描かれている。ようやく、ケンヂの疑惑は少しばかり共有されたのだ。

 もっとも、その箱の中から出てきたのは、蛙や蛇のおもちゃだの、平凡パンチ(何と懐かしい)や例のポルノ映画のポスターだの、メンコやビー玉だの、およそ名誉や金銭に関わるようなものは何一つないが、後にストーリーに関わるものとして、ケンヂが描いて署名までした「レザーぢゅう」と「きょだいロボット」の絵も出土した。


 むやみに箱などを開けるものではない。浦島太郎は爺さんになってしまった。舌切りすずめの欲張り婆さんも、見事、返り討ちに遭っている。ギリシャ娘のパンドラに至っては希望だけを箱に残して、あらゆる災厄をこの世にばらまいてしまった(古代ギリシャ語で、この「希望」を意味する「エルピス」は多義語であるため、神話は様々な解決が成り立つという。しかし、どうせ不吉なものだろうな)。

 秘密基地の箱から最後に出てきたのは、大きな布であった。開くと旗であった。「あのころの記憶」がやっとで皆に蘇ってくる。ドンキーが作った旗。ケンヂの生涯きっての名演説、「次にこれを掘り起こすときは、地球に大変な危機が訪れている時だ。そして俺たちが、敵から地球の平和を守る時だ!!」。

 これを宣言するケンヂの顔は、191ページ目の上段に出て来る。決して、まぬけ面でもアホ面でもない。みんなの気分も高揚していたに違いない。そして缶を掘り返した5人の脳裏に浮かぶ言葉、それについては次回、書きたい。



(この稿おわり)



ローズマリーはアロマオイルに用いられる。
また、これで鶏さんを味付けすると美味しくいただける。
ローズマリーの赤ちゃん」という恐ろしい映画もあった。
花は小さく可憐。 (2011年7月8日撮影)









































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