おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ユキジとフクベエの参加    (20世紀少年 第139回)

 第5巻の20ページ目、ケンヂの招集した仲間が、地下の秘密基地に結集している。残念なのは、オッチョが子供のころ以来、会っていないはずのヨシツネやマルオやモンちゃん、そして特にフクベエとの間で、どんな再会の挨拶を交わしたのかが描かれていないことだ。

 フクベエは、ケンヂによると「3人の子を実家に預けて、かけつけてくれた」らしい。この3年間、彼はどこで何をしていたのであろうか。それよりも、そもそも、彼はなぜここに来たのだろうか。招集されたのに来ないと怪しまれると思ったか? しかしケロヨンのように断っても、コンチのように無視しても、何の実害もないはずだろう。

 となると、積極的に仲間入りする必要なりメリットなりがあったということか。確かにケンヂたちの行動を偵察する絶好の機会ではあるが、それにしてもトップがスパイを兼務するというのは、あまり聞いたことがないな。あるいは地上の統率は、すべて万丈目に任せたということか。まあ、おいおい考えましょう。


 これで6名、ともだちのご要望である9人まで、残るは3人となった。そんなところに、「何であたしを呼ばないわけ?」と言いながら、不満顔のユキジが愛犬ブルー・スリー号とともに登場する。ヨシツネは好意を寄せているので頬が赤い。マルオは何故ここが?と不審がっているが、彼が秘密基地の地図を家に置き忘れて、ユキジに探知されてしまったのであった。

 オッチョとフクベエの反応が描かれていない。ユキジは1997年の同級会にもドンキーの通夜にも出ていないので、この二人とも二十数年ぶりくらいの再会であるはずなのだが...。

 私の記憶に誤りがなければ(いつも極めて危ういが)、全編にわたり、ユキジとフクベエはただ一度しか口をきいていない。しかも、ユキジが声をかけただけで、フクベエが返事をした気配がない。それも小学生時代のことで、虹の場面に出来るのだが、そのときにまた書こう。


 それよりも不思議な感じがするのは、ユキジとオッチョの会話もほとんどない。この両人は、ほかのメンバーが怖い、怖いと言っている2000年のオペレーションにおいても、およそ弱音を吐かない強靭な精神力の持ち主であり、武芸も達者で、いわば20世紀少年関羽張飛のようなソルジャーなのだが、子供時代から大人になっても交流がない。

 十数年ぶりに再会することになる新宿歌舞伎町の教会でもほとんど摺れ違い。最後の反陽子爆弾の爆発防止作戦においても、カンナと共に「ともだち府」に乗りこむときも、ほとんど事務的なコミュニケーションだけ。オッチョは口数の少ない男ではあるが、比較的、女子供とはよく話す。ユキジは弱者の部類に入らないということかな。

 もっとも、12月21日の「のろし」が上がった夜、ユキジはバイクでオッチョを送ろうとしているので、いがみ合っている訳でもあるまい。それにしても、このときのオッチョの返事たるや、女に誘われてこんな態度でいいのかというほどの愛想のなさ。


 ともあれ、ユキジに良縁も断りながらこの日を待っていたのだから責任を取れと言われては、ケンヂも返す言葉が無い。これで7人と1匹になった。あと2人。「よげんの書」を知っている人間がまだいるとケンヂが言い出す。すでに招待状も出したらしい。ユキジが「まさか」と絶句しているが、その、まさかであった。


(この稿おわり)



東北出身のクモ。(南三陸町にて、2011年10月4日撮影)