おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

敷島教授一家の行方不明      (20世紀少年 第13回)

 
 警視庁からチョーさんら二人の刑事がケンヂの店を訪ねてきた理由は、一家全員行方不明となった敷島教授の自宅の勝手口に、空のビール2ケースが放置してあったため、近所の酒屋を捜査対象にしたからのようである。はたして「当たり」であった。

 ケンヂは店がコンビニになってからも、酒屋時代からのお得意さんには配達のサービスもしていたという。敷島先生は昔からのお客さんだったのだろう。ケンヂが「集金、まだなんスよ」といたく落ち込んでいるのをみると、昔ながらのツケと集金という掛け売りの方法で商売を続けていたのだろう。

 ケンヂ店長にとってみれば「飲み逃げ」だが、一家にとってはそれどころではなかったはずだ。配達の対応に出たのは奥さんとのことだが、ついに物語には出てこない。のちに教授と娘は、とんでもない役割を果たすことになる。


 それにしても24ページでは、ケンヂが配達したのはわずか約2週間前となっており、これが中瓶としても20本入りのケース2箱がその間に空になるとは、尋常な消費量ではない。姿を消す前から、教授の身辺は、何かおかしなことになっていたのだろう。

 ともあれ空きビンの回収に向かったケンヂは、どこかで見たようなマークが教授の自宅に落書きされているのを見つける。ともだちマークの初登場である。ここですぐに彼が思い出していれば違う展開もあったろうが、とにかくケンヂは記憶力が良くない。

 これをデザインしたオッチョが一目見て思い出したのと比べるのは気の毒かもしれないが、ドンキーも覚えていたし、泥酔状態のユキジまでが、おや?と思ったのだ。それなのに、この直後から行く先々でこのマークが出て来るのに、当時の中心メンバーであったケンヂはなかなか思い出さない。


 結局、何か埋めたぞというモンちゃんの記憶力に助けられて、缶や旗が地面の下から出てきたため、同じく思い出せずにいたヨシツネにもマルオにも、考古学的証拠によって現実が付きつけられることになる。この時点での彼らは、後年の活躍ぶりからは信じがたいほどに頼りない。

 そうはいっても、私とて覚えていることしか覚えていないのだ。どこかで何か大切なものを埋めたかもしれないのだが(実際、当時は学校でも「タイム・カプセル」をやっていたような覚えもある)、こんな騒ぎになるようなものは出土しないでほしいな。



(この稿おわり)


わが家のビールは銘酒ハートランド
配達は代金引き換えなので飲み逃げはできませぬ。 (2011年6月20日撮影)


 



























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