おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

二人の刑事      (20世紀少年 第12回)

 
 特に内乱が起きた直後など、首都の治安維持や要人の警護は、ときの政府にとって特に重要な課題の一つである。ヨシツネの名の由来となった源義経が、木曽義仲追討後に京の都で検非違使に任命されたのも、西郷隆盛明治新政府の近衛都督を拝命しているのも、彼らの軍事的な統率力に対する高い評価なくしては有り得ない人事であろうと思う。

 そんなこともあってか、他の自治体では大阪府警とか神奈川県警とか呼ばれている都道府県単位の警察組織も、ここ東京では東京都警にあらずして、「警視庁」という特別扱いの命名がなされている。その英語名を直訳すると「都会警察」というTVドラマみたいなものになる。

 
 ケンヂとお母ちゃんが「本物のオッパイ」について語り合っている最中に、二人の刑事さんが尋ねて来る。年配の刑事こそ、後に伝説の刑事と称されることになるチョーさんであるが、ここでの名乗りはない。ケンヂもチョーさんも、お互いにとって最初で最後となるこの会話が、後にそれぞれの人生に大きな転機をもたらすのであるが、この時点では知る由もない。

 ついでに言えば、店長の背中の赤ん坊は、この刑事の孫との初対面の際に、左フック一発でダウンを奪うことになるのだが、それはもっと先の話。ここでは22ページ目から26ページ目までの彼らの会話について、話題を三つ、拾いたい。そのうち敷島教授については次稿に譲るので、本稿では残りの二つについて記す。


 第5回において、ケンヂたちが生まれ育ったのは東京でほぼ間違いなく、その傍証は逐次挙げて行くなどと格好よく宣言したのであるが、冒頭でチョーさんが見せている警察手帳の表紙は、どうみても警視庁と書かれている。いきなり解決か...。

 ちなみに私は、警視庁の警察手帳を一度だけ見せてもらったことがある。世田谷に引っ越して、区役所で転入の手続きをしてから数日後の週末、二人の制服警官が一人暮らしの私のマンションにお越しになった際に、拝見したのである。

 彼らは私に中年男の顔写真を見せ、この男は、近所にある京王線のある駅のそばで起きた性犯罪の容疑者なのだが、見覚えは無いかと訊かれた。ないと応えると、みかけたら連絡してくれとすぐに去った。おそらく、質問に来たというよりも、私の顔面を確認しに来たのだろうと今でも思っています。


 さて、もう一つの話題は、チョーさんと一緒に来た若手の刑事のことである。この人は第4巻18ページ目に出てきて、ショーグンの目の前で薬物中毒死した警察官だろうと思う。彼は”ともだち”の疑惑について一人でバンコクに捜査に来たものの、捕まって自白剤を打たれたらしい。なぜ同一人物だと思うのかというと、根拠は以下のとおりです。


1) バンコクでの彼は見るも無残な姿で、本来どういう顔つきなのかほとんど全く分からないが、ともあれチョーさんの相棒と同様、面長で黒髪、それほど年配ではなさそうである。

2) チョーさんの遺志を継ぎ、ひそかに本件の捜査を続けそうな候補者は、作品中、彼しか出てこない。

3) 両者はよく似た(おそらく同じ)スクリーン・トーンのスーツを着ている。

4) オッチョの人生に偶然はない。


(この稿おわり)


































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