おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

戦争を知る人がいなくなったとき  (第1391回)

 しばらく更新が途切れたのは、やる気をなくした訳ではないのだが、日本国憲法自民党憲法改正草案を長いこと読んできたので、憲法疲れしてしまった。また、特に野党の混乱が酷かった総選挙が、結局、何も政治を変えていない気がして、うんざりしている。おかげで野党は質問時間を削られてしまったではないか。

 さて、以前どこかで、戦争を知る人がいなくなったら、この国は大変なことになるという趣旨の田中角栄の言葉を聞き、ブログにも正確な表現は分からないまま、それに軽く触れたことがある。


 その件に触れた新聞記事があったので、ここで案内申し上げます。2017年12月10日の東京新聞の朝刊。日付からも分かるように、毎年このころは8月と並んで先の大戦に関する記事が新聞に出る。

 取材を受けたのは、元財務大臣藤井裕久氏。85歳。民主党のイメージが強いが、かつて官僚時代に自民党の政治家と一緒に働いていたとは知らなかった。たとえば大平首相の時代に主計官を務めていたと記事にある。


 取材での発言を聴こう。二つの例を挙げます。「中選挙区制と比べて政権交代が起きやすいとされる小選挙区制の導入を求める声は(1980年代末に)与党の自民党内から上がった。戦争を経験した政治家が多く、権力が一方に偏ることの恐ろしさを知っていた」。

 確か小泉時代から始まった、何とかチルドレンの連中に、言い聞かせたい教訓だ。与野党を問わず、また、今年の総選挙に限らず、大きく勝ちそうな政党や派閥に大勢が集まっていくのは、見ていてうんざりしました。結局、長続きしないので、議員年金なんていう亡霊のような制度が話題になる。


 もう一つが面白い。「わたしの師匠である田中角栄元首相に『戦争を知る人がいなくなった時、平和や戦争は観念論になってしまう。近現代史を若い人に教えなさい』と言われた。保守とは過去の歴史を守ること。歴史を壊して何でも新しくするのは保守ではない。今、各地の講演に呼ばれれば出掛けている。戦争の危険が高まっていると感じるからだ。私たちが体験した飢えや恐怖を、若い人に味合わせたくない」。

 
 与党も恐る恐る改憲の議論を始めたようだが、投げた石が大きすぎたなどという意味不明の総括があり、これは改正草案のことだと思うのだが、では、今後どうしたいのか、さっぱり分からない。

 ただ一つ、はっきりしているのは、当面、第9条しか議論する気がないということだ。やっぱりここに戻ってきたか。民間のほうが健全ではなかろうか。もう御年九十にもなろうかという方々が、戦争体験を語り始めている。日本の爺さん婆さんもやるではないか。よほどの危機感というか既視感があるのだろう。

 来年は、第9条と関連して前文を、もう一度話題にして、もう少し戦争憲法を勉強しなければと思います。みなさまにおかれては、良い年をお迎えください。ぜひ。



(おわり)





拙宅のバルコニーから見た冬の朝焼け
(2017年12月20日撮影)