おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

内閣総理大臣所信表明演説  (第1390回)

 憲法改正に関連して、ここでは前々回に自民党の「Q&A」、前回は衆議院の基礎的資料をアップしました。もう一つ、最近の情報として今月(2017年11月)の17日、「第百九十五回国会」(今般の衆議院解散総選挙に伴う特別国会)において行われた「安倍内閣総理大臣所信表明演説」の全文も掲げます。

 所信表明演説は衆参両院で行われているが、まさか両者が違うものではないと思うので、首相官邸のサイトからそのまま引用する。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement2/20171117shoshinhyomei.html


 私は研究者ではないが、数年前に仕事の関係で論文を書く必要に迫られたとき、詳しい人から学術論文の書き方について、基礎のようなものを教えてもらったことがある。今でも記憶にあるのは、一番大事なことを、最初と最後に繰り返して二回書けというものだった。
 
 それからは、一気に読めそうもないなという分量の文章は、まず最初と最後だけ読んでおいて、その必要があれば余裕があるときに通読することにしている。この点、今回の所信表明演説は、章立てでいうと「一 はじめに」で始まり、「六 おわりに」で締めているから分かりやすい。


 冒頭の「一 はじめに」は、「緊迫する北朝鮮情勢、急速に進む少子高齢化。」という文で始まる。その次の文に、今回の解散・総選挙の大義名分であった「国難」が出てくるので、北朝鮮対策と少子高齢化国難だろう。これは選挙期間中から話に出ていたものだ。

 さて。ここからは至って個人的な意見になるが、物事には優先度というものがある。それは緊急度や重要度や好みなどで決まるものなのだろうが、通常、優先度の高いものから言及していくものではないか。とくに公務員が作る文章はそうで、強調したいし、途中で読み止めてられては困らないようにしたい。


 これを前提としてみると、我が国難は、「緊迫する北朝鮮情勢」が対応すべき第一優先順位の事柄であり、第二位が「急速に進む少子高齢化」となる。これは、続く各論の部分で、二番目の章が「二 北朝鮮問題への対応」であり、次が「三 少子高齢化を克服する」という順序であるのと対応している。

 まず間違いなく、安全保障と拉致被害者対策を抱えている北朝鮮への対応が、第一の懸案と言っている。もちろん、これは極めて重要な政治課題なのだが、私は見解が異なる。拉致被害者やご家族には申し訳ない言い方になるが、順序が逆だろう。この点につき、反対意見は尊重するが、自論は変えない。


 いま北朝鮮の問題を深刻に悩んでいる人たちは、他にも、ミサイルが何度も飛んでくる北日本の方々もいる(私がこういう意見を言いにくくなっている雰囲気を誰が醸成しているか、言うまでもない)。だが、ほとんどの人は毎日おびえて暮らしている訳でもないし、とうてい自分たちで何かできるような問題でもない。

 他方で、少子高齢社会は、すでに毎日のごとく子育てや介護や働き手不足で、多くの国民が日常的に難儀しており、いずれそのツケが増税となって押し寄せてくるおそれが大きい。しかも、解決には何十年もかかり、どんどん手を打っていかなければ悪化する一方だ(特に少子化のほうは)。


 この全国民的大問題を「二の次」にしているかのような構成は、私の勘違いでなければ、最後の「六 おわりに」と連動している必然的なものだ。ここでようやく憲法改正が出てくるのだが、決して付け足しではなく、上記の論文の工夫と同じで、最後に置かれた主張は目立つ。

 要するに、この所信表明演説において、「安全保障」と「憲法改正」はセットになって、メニューのトップに置かれている。これが私の所感です。ちなみに、「六 おわりに」では、野党時代の苦労話も出てくる。国民の連中に下野させられて、腹立ちまぎれに作ったのが憲法改正草案でなければよいが。



(おわり)



東北の秋空  (2017年11月12日、仙台駅前にて撮影)












































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