おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ひみつ  (第1251回)

 毎朝、シジュウカラの鳴き声が聞こえる季節です。今回は第56条と第57条。改正草案は、私がみたところでは第57条に変更はないので、第56条のみ引用します。

【現行憲法

第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。


【改正草案】

(表決及び定足数)
第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。

(会議及び会議録の公開等)
第五十七条  (略)


 現憲法の第56条は、第1項で両議院それぞれが、「議事を開き議決すること」ができるための出席人数の要件を定めている。「三分の一」とは、意外と少ないなという印象を持った。

 もっとも、国会の議決というのは、すべて急ぎのはずであるから、例えば東京で大きな地震があって半分も集まれないので延期しようとか、第2項のように賛否同数だったときに再会議というのでは、本当に急ぐとき本当に困る。これはこれで、決め事として必要なのだろう。


 改正草案は、第56条において、「議事を開き」を削った。この案によると、3分の1に満たなくても、議決はできないが、会議を正式に開催して議論はできるということだろう。そうとしか読めない。

 好意的に読めば、これまで最大政党の党大会とか、赤坂の料亭で決まっていたことも、仮に反対者や中立者がごっそり欠席しても、公の場で審議だけなら進めることができるということだ。

 意地悪く読めば、3分の1以上の議員がいる政党だけで開会し、反論も野次もないまま、議論をどんどんすすめてNHKに放送してもらい、読売新聞も読んでもらい、議事録も積み上げてゆくことができて、何だか便利そうである。


 次の第57条にも、三分の二ルールが出てくる。こちらは、最近まで私は存在すら知らなかった「秘密会」の規定である。これまで、実績はあるのだろうか? 少なくとも私が新聞を読むようになってからは無いと思う。

 この秘密会と憲法改正の条項をみるだけでも、一政党(または、定例的に連立与党を組む複数政党)に、三分の二以上の議席を与えることが、どれほどハイ・リスクかということが実感できる。3分の2に満たなければ、多人数の野党も賛成するほどの中身か、大政翼賛会ができる場合でなければ無理だ。


 それにしても、秘密にする必要がある中身とは、どんなものがあり得るのか。国民も納得するような事情がなければ、次の選挙でひどい目に遭うから、そうそう勝手なことはできまい。

 国会中継も新聞報道も議事録の公表もできないし、してはいけないと思える事柄というと、軍事だ。国民に公開するということは、このご時世、世界中に永久に公開するに等しい。例えば、集団的自衛権の発動相手とか、宣戦布告の時期とか、そういうことぐらしか思い浮かばない。どうも物騒だな。さて、このあとは衆議院の優越。




(おわり)




アヤメとショウブとカキツバタの区別がつきません。
(2017年5月4日、小石川植物園にて撮影)







































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