おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

発議  (第1379回)

 解散するのですか。私はここで何回か書いたように、政局に関心は薄く、性格は根っから保守的。ただし、仕事に関係があるから、憲法民法や労働法の動向は意識的に追っている。

 だから、本来は保守政党にしっかりしてもらっていれば文句はないのだが(ほとんど、過去ずっと、そうだった)、自民党の2012年改正草案は、出来が悪いとしか思えないので、ここで反論ばかりしている。


 衆参両院で過半数議席を占めていながら、国会運営も内閣改造も、うまくいかずにこの事態となると、解散すべきは衆議院ではなく、自由民主党だろう。それなのに殆ど離党者も出ないし、寄らば大樹の陰らしい。零細個人事業としては、羨ましい限りの営業方法です。

 先日、どこかの芸能人(?)が、この解散は「けしからん」ので、ボイコットすべし(つまり投票所に行かず、棄権せよ)という論陣を張っているのをみた。「けしからん」のは同意見だが、手段には反対する。


 そういうことをしたら、組織票に強い政党がますます有利になるのは明白だし、総理総裁いわく今の日本は「国難」の危機にあるそうなのだが(首相が誰かということかな)、こんなタイミングで投票率が落ちては、歴史に禍根を残し、子孫に対して顔向けができない。

 それに、日本の選挙民は民主主義にも東アジア情勢にも興味が無いと対外的に公表するようなものだ。外交通商において、何も良いことはない。以前からの持論ですが、早いこと欧米の国にあるという「白紙投票は与野党を問わず政治不信」という合意形成をしたい。もっとも、これは上記の「組織票有利」を回避できないが。

 長い前置きになった。今日のテーマは、憲法改正の発議。憲法の改正のみは、国会だけでは決められないので、これを国民に問おうという発議をする。その成立の条件は、今の憲法(三分の二以上)と改正草案(過半数)で、こういうふうに違う。以下の条文の前半。


【現行憲法

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

【改正草案】

第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。


 私は他国の憲法改正要件を全く知らないが、海外の事情は全く関係ないと思っている。この改正草案は憲法を、過半数で可決される法律と同じレベルにまで格下げしようとしている。ここまで堂々と軽視するというのも、たいした度胸です。

 実際、これを下書きしている現在、衆参両院とも最大与党が単独で過半数議席を占めている。その気になれば、会期中は毎日、強行採決して憲法改正の発議ができる。しかも、改正草案は「議員が発議し、国会が議決する」と言い換えている。国民の出番については、事後の承認を必要とするだけだ。

 
 頼みの綱は、最後の砦、国民投票ということになる。その件の比較検討は次回に譲るとして、肝心の国民は大丈夫か。過去の国政選挙においては、ときどき「地滑り的大勝」という表現を見聞きしたものだが、今や死語だ。毎回そうだから。

 一つには選挙結果予想が上達してきたということもあるのかもしれないが、有利そうな政党に投票しよう(つまり負けたくないし、自分の一票を無駄にしたくない)という気分的人気投票になっているのは、昨今の政権交代や、一部の地方選が明らかにそういう傾向を示している。


 加えて、身内の恥をさらすと、親族に訊いても複数名から「憲法は難しくて分からない」という判で捺したような反応が返ってくる。冗談ではないよ。憲法ほど読みやすい法規も珍しい。憲法ほど分かりやすい一般向けの解説書が出回っている法令もない。

 新聞でもテレビでも、本当によく報道されるようになった。この期に及んで「分からない」とは、怠慢というほかない。この調子では、直近のアメリカ大統領選挙や、イギリスのEU離脱国民投票のように、あとで「しまった」という事態を招きかねない。心配。

 たとえ憲法が難しくても、私たちには直観的に人を見る目や、事柄の怪しげな感じをキャッチするセンスを持っている。引き合いに出して関係者には済まんが、典型は大阪都構想だった。しかし、これも、やってみないと分からない。心配。では次に、国民投票の「決め方」に移ります。




(おわり)




伯父が戦死したテニアン島  (2017年1月12日撮影)











































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