おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

衆議院の解散  (第1248回)

 
 難題でございます。今回だけでは終わりそうもない。世間でも議論が多いらしい。さすがに憲法学者の中にさえ、ここは何とかしないといけないという意見があると、新聞で読んだ覚えがある。もっとも、このブログは法学を語る場所ではない。これまで世の中で学んできたことを頼りに考える。


 上図は衆議院のサイトから拝借したもので、他にも似たり寄ったりの図表が多く、でも少しの差異はあるものの殆ど同じで、小学校の教科書にも載っている三権分立の図である。行政府(内閣)は、立法府(ただし衆議院のみ)を解散することができる。

 この規定が今の憲法において明確ではないという問題提起は、私が若いころからあった。付随して野党ら反政府の側から、しばしば語られるのが、首相の恣意的な判断で、任期途中の衆議院を解散してよいのかという疑義である。ご指摘ごもっともであると思う。


 もっとも、任期前の衆院解散をやってきたのは自民党だけではないし、戦前の記録をみても、任期満了はやはり少ない。ついでにいうと、首相がころころ代わるのも戦前から頻繁にあり、この立法府と行政府の「落ち着きのなさ」は、わが国の立憲民主主義の宿啊なのだ。私もこれを放置してきた一人です。

 日本の政治体制は、比較的、イギリスと似ていると聞く。二院制で、首相はいるが大統領はおらず、ロイヤル・ファミリーがある。憲法の形態が異なるが、むしろイギリスが先輩だから、どうこう言えないし、どちらが良いも悪いもない。


 そのイギリスでも、首相の決断で解散総選挙と相成った。EU離脱がメインテーマになりそうで、国民投票的という意味において、かつての郵政解散と似ている。もう一度、考え直したいらしい。アメリカでは羨ましく思う人も多いだろうな。

 ただし、英国の例は正に国家の一大事であり、恣意的とは言い難いと思う。恣意的な解散とは、首相・与党の都合の良いときだけという意味で、もっと分かりやすく言うと、議席が増えそうなタイミングである。せいぜい、次まで待つと、もっと悪い結果になりそうだという時に解散されてきた。この評価は賛否はともかく、異論はあるまい。


 さて、憲法です。衆議院の解散に関する条項にまで参りました。かくのごとく、「誰が衆議院の解散を決定する権限を有するのか」について明記されていません。英語版も珍しく、この和文と同じで受動態である。

【現行憲法

第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。


 良し悪しはともかくとして、慣習法でやって参りました。これは、憲法第9条と自衛隊との関係と同一の課題だと考えます。野党や報道機関は、九条に関しては意見主張が激しいのに、こちらは知る限り、大人しい。きっと、彼らにとっても、任期途中の解散が都合よい面もあるのでしょう。

 改正草案は、自衛隊について先ごろ首相が言及されたとおり、現状追認をしたいという意向が強いのと同じで、この第54条についても、今までやってきたように(全てがこの条文案どおりのケースではないですが)、次の一項を現行の憲法に付け加えたいという考えです。


 ちなみに、上記の現行三か項目は、改正草案でもそのままですので、ここでは省略します。次回、引き続きこの件について考えます。

【改正草案】

第五十四条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。 (後略)





(おわり)


みどりの日 文京区にて
(2017年5月4日撮影)


















 難題でございます。今回だけでは終わりそうもない。世間でも議論が多いらしい。さすがに憲法学者の中にさえ、ここは何とかしないといけないという意見があると、新聞で読んだ覚えがある。もっとも、このブログは法学を語る場所ではない。これまで世の中で学んできたことを頼りに考える。


 上図は衆議院のサイトから拝借したもので、他にも似たり寄ったりの図表が多く、でも少しの差異はあるものの殆ど同じで、小学校の教科書にも載っている三権分立の図である。行政府(内閣)は、立法府(ただし衆議院のみ)を解散することができる。

 この規定が今の憲法において明確ではないという問題提起は、私が若いころからあった。付随して野党ら反政府の側から、しばしば語られるのが、首相の恣意的な判断で、任期途中の衆議院を解散してよいのかという疑義である。ご指摘ごもっともであると思う。


 もっとも、任期前の衆院解散をやってきたのは自民党だけではないし、戦前の記録をみても、任期満了はやはり少ない。ついでにいうと、首相がころころ代わるのも戦前から頻繁にあり、この立法府と行政府の「落ち着きのなさ」は、わが国の立憲民主主義の宿啊なのだ。私もこれを放置してきた一人です。

 日本の政治体制は、比較的、イギリスと似ていると聞く。二院制で、首相はいるが大統領はおらず、ロイヤル・ファミリーがある。憲法の形態が異なるが、むしろイギリスが先輩だから、どうこう言えないし、どちらが良いも悪いもない。


 そのイギリスでも、首相の決断で解散総選挙と相成った。EU離脱がメインテーマになりそうで、国民投票的という意味において、かつての郵政解散と似ている。もう一度、考え直したいらしい。アメリカでは羨ましく思う人も多いだろうな。

 ただし、英国の例は正に国家の一大事であり、恣意的とは言い難いと思う。恣意的な解散とは、首相・与党の都合の良いときだけという意味で、もっと分かりやすく言うと、議席が増えそうなタイミングである。せいぜい、次まで待つと、もっと悪い結果になりそうだという時に解散されてきた。この評価は賛否はともかく、異論はあるまい。


 さて、憲法です。衆議院の解散に関する条項にまで参りました。かくのごとく、「誰が衆議院の解散を決定する権限を有するのか」について明記されていません。英語版も珍しく、この和文と同じで受動態である。

【現行憲法

第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。


 良し悪しはともかくとして、慣習法でやって参りました。これは、憲法第9条と自衛隊との関係と同一の課題だと考えます。野党や報道機関は、九条に関しては意見主張が激しいのに、こちらは知る限り、大人しい。きっと、彼らにとっても、任期途中の解散が都合よい面もあるのでしょう。

 改正草案は、自衛隊について先ごろ首相が言及されたとおり、現状追認をしたいという意向が強いのと同じで、この第54条についても、今までやってきたように(全てがこの条文案どおりのケースではないですが)、次の一項を現行の憲法に付け加えたいという考えです。


 ちなみに、上記の現行三か項目は、改正草案でもそのままですので、ここでは省略します。次回、引き続きこの件について考えます。

【改正草案】

第五十四条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。 (後略)





(おわり)


みどりの日 文京区にて
(2017年5月4日撮影)