おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

理想  (第1938回)

日本国憲法の前文には、「崇高な理想」という語句が二回出てくる。前後を含めて該当箇所のみ引用すると、先ず第二段落の「平和主義」といわれている箇所にある「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」。

もう一か所は前文の最後の一行で、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」。なお、憲法の全条文は、衆議院のサイトにありますので、いつもこれを参照しています。

www.shugiin.go.jp




この理想または理念という言葉は、憲法学者の本やサイトにもよく出てきますし、現首相もしばしば憲法を語る際に、「理念」という言葉を使います。今回これにこだわるのは、憲法と、その他の法律・条約などとの違いを考えてみた。

上記の前文からの引用箇所で述語に使われている言葉を拾うと、「祈願」、「自覚」、「誓ふ」などが使われている。他にも「決意」、「確認」あるいは第九条には、「希求」という言葉も出てくる。これらは、あまり法律には使われてはいない表現であるように思います。まず刑法には、なさそうだ。


理由は、まだ部分的にしろ、実現していないものがあるからです。憲法は法律と異なり、理想を追い求めている途中だからです。もちろん現実には、道路交通法労働基準法など、なかなか守られていない法律群がありますが、自らこれは理想だ理念だなどとは語りません。文面はあくまで、このとおり守れです。


憲法はそういう点で、発展途上です。国民の三大義務と呼ばれている、教育と納税と勤労も、われわれは現状、100%までは義務が履行されていないことを知っていますし(私も失業と病気が重なり、勤労と納税は行っていなかった時期がある)、しかしながら、常にこれを目指さなければならず、国家はその手助けをしなければならないという理念です。


早ければ今年中に、憲法改正国民投票が行われるかもしれません。少なくとも与党は、国会その他で公式に議論を始めるはずです。そのこと自体は、憲法が自身で認めていますし、私は一字一句、憲法を変えてはならないとは考えていません。

例えば、衆議院の勝手な解散には、いつも腹を立てておりますので、内閣不信任案が議決されたときにのみ、総理大臣は衆議院を解散できると明記したいのです。ちゃんと所定の期間は勤労しなさい。


さて、具体的には連中、自衛隊憲法に明記したいそうです。それはおかしいと、ここで何回か書いてきましたので、同じことは繰り返しません。別のことを言います。

われわれは、現状、自衛隊を必要としています。拉致問題の解決に非協力的であるうえ、ミサイルを平気で飛ばしてくる近隣国がありますし、無遠慮に潜水艦でウロウロする軍事大国もある。


自衛隊が武力を持ち、一方で、日本国憲法には武力を持たないと書いてあるのは、小学生でも(というか小学生ならば、か)分かることですが、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会」は、まだ努力中であり、実現していない理念です。

その日まで、自衛隊は必要です。少し乱暴かもしれませんが、災害救助は自衛隊が持つ、その証明済みの実力を、警察・消防や海上保安庁に、理論的には移譲できるはずです(もちろん、予算・人員・器材など全部)。オスプレイや空母は要りませんから、本当に絶対必要なら、自衛隊に残せばよい。


国民も防衛省自衛隊も、進んで憲法違反をしようとしているのではないのは当然のことです。裁判所が一票の格差でよく使う「違憲状態」に似ているように思います。まだ理想に達していないから、変な言葉ですが、そう言うしかない。最後に、第九条を転載します。


第二章 戦争の放棄
〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


みなさんは、第九条の第一項と第二項しか相手にしない。でも、この第九条だけで成立している第二章には、明確に「第二章 戦争の放棄〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕」と書かれており、自衛の戦争ならいいとか、集団的自衛権を有するとかいうような解釈を全く許していません。これが本憲法の理想の根幹です。

「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」したが上の、達成は至難である理念ですが、守るべきは第九条だけではなく、前文も忘れてはならない。自民党改正草案の前文案の、格調の低さを改めてご一覧願いたい。



(おわり)




昨夕の東京と富士山  (2019年10月27日撮影)





























.