おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

不逮捕特権というらしい  (第1243回)

 そういう言葉を知らなかったが、法の内容は聞いたことがある。国会議員は会期中なら逮捕されない。これを「不逮捕特権」と呼びならわすということを、改正草案が付けたタイトルで知った。文面は変わっていないので、いまの憲法だけ転記します。

第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

 これまで見て来たところでは、日本国民は現行犯を除き、司法府が出した令状なしでは逮捕されない。逆にいうと、仮に司法府と司法警察権を持つ行政府が反乱を起こしたとしたら、誰でも逮捕されるということではなかろうか。

 こういう非道な事態が国レベルで起きるのは、やはり拙宅においてではなく、政治か軍事だろう。そこで、選良たる国会議員だけは、せめて会期中だけは安全にしておかなければ国家が転覆してしまう。なんだかんだと悪口をいいつつ、やっぱり国会がいきなり消滅したら困る。


 第51条は会期が終わっても、国会の場での言動なら、法的責任は問われないとしか読めない(社会的責任は別だろうが)。この両条をいいことに、与野党とも言いたい放題やりたい放題であることは、全国民の詳しく知るところである。

 寅さんなら「そいつを言っちゃあ、おしめえよ」と言うであろうことを、平気で口にするのが国会議員の資質として求められる。あれはあれで、認めざるを得ないのだが、一部の人たちの本音を代弁しているのだ。清らかになり過ぎると魚も棲みづらくなるので必要悪ということでしょうか?


 されど問題は、そのあとの説明、撤回、謝罪、身の処し方といったあたりに、プロの気概と技能を感じることが少なくなってきた。こうして、庶民感覚を麻痺させてから、好きにしようという高等戦術なのだろうか。

 なお、第50条にある「法律の定める場合を除いては」という例外規定は、国会法に定めがある。長いので代表者として第33条に登場願う。さすがに痴漢の現行犯などは駄目なのだ。

国会法 第三十三条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。


 私はこの不当逮捕の条項をながめていると、ナチス・ドイツの国会議事堂放火という暗い歴史的事件のことを思い出す。あれは厳密にいうと、司法府や行政府の暴走ではなく、一政党の自作自演のようなので、少し憲法の規定とは性格を異にするかもしれない。

 それでも、不当逮捕共謀罪を組み合わせた教科書的なクーデタであることは間違いなかろう。お家騒動の時代ならともかく、近代国家でも、行くところまで行くと、ああなってしまうのだということは、やはり歴史を学ぶ意義を見直す重要な機会であると思う。




(おわり)





散歩中の風景。サツキ、ヒコウキ、ハナミズキ
(2017年4月下旬撮影)














































.