おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

十月の出来事  (第1354回)

 10月20日皇后陛下は、82歳の誕生日をお迎えになられた。遅くなりましたが、おめでとうございます。その後、「宮内庁の質問に対する文書ご回答」が公表され、今も宮内庁のウェブ・サイトに掲載されている。書き終えられたのは13日だったそうで、タイ国の故国王陛下への弔辞で締めくくられている。ますは、宮内庁の最初の質問を引用する。
http://www.kunaicho.go.jp/page/kaiken/show/3

 「問 この1年も自然災害や五輪・パラリンピックなど様々な出来事がありました。8月には,天皇陛下が「象徴としての務め」についてのお気持ちを表明されました。この1年を振り返って感じられたことをお聞かせください。」

 ご回答は質問に沿って進められており、加えて、1月のフィリピンご訪問の話題にも言及なされている。最後の方に、質問にもあった8月の天皇陛下の「お気持ち表明」についてのご感想があり、これはマスコミにも、かなり大きく報道されていたのをご記憶の方も多いと思う。その段落を転載する。

 8月に陛下の御放送があり,現在のお気持ちのにじむ内容のお話が伝えられました。私は以前より,皇室の重大な決断が行われる場合,これに関わられるのは皇位の継承に連なる方々であり,その配偶者や親族であってはならないとの思いをずっと持ち続けておりましたので,皇太子や秋篠宮ともよく御相談の上でなされたこの度の陛下の御表明も,謹んでこれを承りました。ただ,新聞の一面に「生前退位」という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした。それまで私は,歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので,一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の感じ過ぎであったかもしれません。

 皇后陛下とは50年をこえるお付き合い(個人的な付き合いではないのでご安心を)になるが、「衝撃」というような言葉遣いを安易になさるようなお方ではない。「歴史の書物」の中には、天智やら天武やら呼び捨てのものもあるし、島流しだの挙兵だのと物騒なご先祖の物語もあるのだが、その中でさえ見たこともない「活字」、しかも大きな活字が新聞に出た。

 数日後のNHKの朝のニュース。子供のころからの習慣で毎日のように7時になると観るのだが、冒頭、二つの殺人事件の報道が朝っぱらからあり、そのあとで相変わらず「生前退位」とアナウンサーがしゃべり始め、字幕にも出た。日本経済新聞も態度を改めておらず、今日(10月30日)の朝刊にも、対談記事で同紙の記者が「生前退位」と述べたのを、そのまま活字にしている。


 こういう連中は、あるいは、こういう連中にこう言わせている連中は、人の心の痛みはもちろん、微妙な揺れさえ全く分からない。そもそも分かろうとしない。分かっても、無視する。他のマスコミには、これから譲位という言葉を使うと表明したところもあって、それを知らないはずがない。

 彼らにとって大切なのは、個人として尊重されるべき人の心と生身の命ある天皇皇后両陛下ではない。ただ単に天皇制というシステムだけが、利害損得において重要だから、こういう芸当を平気で見せる。日経は今の購読期間が終わったら、もう取らない。テレビのニュースは、他を探すか...。しんどいことよ。明日から11月、新品の月めくりカレンダー。気を取り直して働こう。





(おわり)






ニホンカモシカ  (2016年10月21日 家族撮影)






































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