2020年に入って新型のコロナ・ウイルスが各地に蔓延し、世界中の人たちが苦しんでいるわけですが、日本だけの不幸・不運があるとしたら、今年、東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定であったことだと思います。
以下、想像も交えますが、世間様も似たようなことを言ってみえます。すなわち一つは、東京大会に備えて国も都も、きっと莫大な予算と相当の人数を割いて、準備に大忙しの時期であったこと。もう一つは、開催に支障が出ないよう、新型ウイルスは我が国において、アンダー・コントロールですと言おうとしたあまり、随所で政治的な判断を遅らせたこと。
もう最近はお金も体力もなくなってきて、滅多に海外旅行にゆかなくなりましたが、上掲の写真は十数年前にギリシャとイタリアに行ったとき、アテネのパルテノン神殿で撮影したものです。古代の遺跡を何日かかけて巡りました。生涯の思い出です。
今年3月ごろから、外勤がめっきり減りました。お客さんとの打ち合わせ等が次々とキャンセルになり、勉強と仕入れの機会であるセミナーや研修も、ここ東京では全て中止になりました。そんなわけで、普段ほとんど見ないテレビを眺めていたら、アテネで聖火の採火式をやっていました。3月12日のことです。
昔話から始めますと、1964年の東京オリンピックは、幼稚園に入る少し前に開催され、親に言わせると小僧の私は、白黒テレビにかじりつくようにして見ていたらしい。それ以来、オリンピックは好きなのですが、かつてのアマチュアリズムの大運動会は様変わりし、今やプロがどんどん出てきて、スポンサーもどんどん付いて、ビジネス展示会のごとし。
それでも東京が立候補し、決定し、私としましては還暦を迎える年に、おそらく人生最後の機会となるであろう、自宅から日帰りで行けるところでオリンピック・パラリンピックをやるというのだから喜びました。人気の競技は高値だし抽選だろうから、マイナーな競技会場に行って、当日券の自由席でのんびり楽しもうという魂胆でありました。
徐々に様子がおかしくなったのは、エンブレムの著作権騒動からだったでしょうか。続いて、当時のIOC委員の本人だか息子だかに、日本の広告代理店が裏金を渡した疑惑が持ち上がり、収賄側はインターポールに国際指名手配されたものの、どこかの国に逃げ隠れて出て来ない。あれはまだ解決していないのではないか?
皇族の末裔を名乗る者が、責任ある地位を辞退しましたが、上記と別件かどうか知りません。知りたくもない。金の匂いばかりか、お江戸の海も異臭騒ぎでトライアスロンの選手に迷惑をおかけし、極めつけはマラソンと競歩の灼熱地獄クライシス。札幌で開催する代替案で一件落着したかにみえた矢先でした。
アテネに聖火がともった3月12日は、その前日にWHOがパンデミックを宣言したというタイミングです。もしや緊迫ムードが漂ようのかと心配していたら、早くも翌13日には聖火リレーが中止になってしまった。時事通信等が報道していますが、これまた懐かしい名前のスパルタにおいて、聖火に人波が押し寄てしまった。パンデミックを気にしたのだろう、リレーは中止で聖火は人手を離れ、船か飛行機か、乗り物に乗って日本を目指すことになった。
この前日、すでに3月12日にはもう日本政府と東京都が延期にむけて動き出した。NHKがそう言うのだから間違いあるまい。どうやらIOCに対し「中止」は避けたいので「延期」にしてくれと頼むとともに、あのお喋りで気まぐれなアメリカ大統領に、因果を含めたかったらしい。繰り返しますが、スパルタより前です。事態の悪化を早めに防ぎたかったのでありましょう。
IOCは3月17日に臨時の理事会を開き、予定どおりの開催で合意した由。そのあと二転三転して、「完全な形」での開催が無理なら、一年延期もやむを得ないと、総理が認めたのは3月23日(月)。あの三連休のあとだ。このあとNHKは何度も、国民の「三連休の気のゆるみ」を強調しているが、「東京大会は予定通り」であると政府・東京都公認の時期だったことを、ゆめ忘るることなかれ。
わが都知事も3月25日、準備局のサイトで、一年後なら安全安心だと安心している。これら預言者の予知能力の程度は、そう遠からず判定できます。それにしても、上記のNHKの報道は、私が思うに大事な要素が欠けている。なぜ「完全な形」を、23日の時点であきらめたのか。
この話題は重いので、いずれ改めて続編を書きますが、今回は最後に、「いい加減にしろ」と言ったお方の話を残しておきます。今後の情報源は共同通信。3月17日にロイターが報じたそうです。今回のコロナ騒ぎ、全般に女性のほうが切れ味鋭い見せ場を作ることが多い。
ソチ冬季五輪のアイスホッケー女子でカナダの4連覇に貢献、夏季大会にもソフトボールで出場し、現在、IOCの委員を務めるへーリー・ウィッケンハイザー氏は3月18日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京五輪を予定通り開催することは「無神経で無責任な行為。この危機は五輪よりも深刻だ」と自身のツイッターで非難した。
余計なお世話をやくと、「この危機は五輪よりも深刻だ」というのは原文からして、新型ウイルスの危機の深刻さは、オリンピックの壮大さを上回るというような語感です。
このあと3月23日、カナダは東京オリンピック・パラリンピックへの選手団の派遣を中止すると公表。日本側は同日、とても「完全な形」とは言えなくなったらしく、TKOのタオルを投げたのだと私は思う。それにしても、「完全な形」って何だろう。
(おわり)
パルテノン神殿 (2006年5月24日撮影)
【追記】「緊急性の高い症状」について
4月28日、全国紙や通信社のネット・ニュースに、厚生労働省が新型コロナウイルス感染症の「緊急性の高い症状」を公表したという記事が出ました。重要な報道ですが、社によって12項目あり、または13項目ありで、バラツキがある。これは情報源となった厚生労働省の4月27日付「事務連絡」に一部混乱があって、本文と「様式2」が12項目、「様式1」が13項目だからだと思います。内容は変わらず、12項目のうち「肩で息をしている・ゼーゼーしている」を別々に勘定すると13になります。チェックリストはこれではまずいですから、13項目に統一した方がよいです。
「事務連絡」
https://www.mhlw.go.jp/content/000625758.pdf
(おわり)
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