おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

3月12日 聖火  (第1237回)

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2020年に入って新型のコロナ・ウイルスが各地に蔓延し、世界中の人たちが苦しんでいるわけですが、日本だけの不幸・不運があるとしたら、今年、東京オリンピックパラリンピックが開催される予定であったことだと思います。

以下、想像も交えますが、世間様も似たようなことを言ってみえます。すなわち一つは、東京大会に備えて国も都も、きっと莫大な予算と相当の人数を割いて、準備に大忙しの時期であったこと。もう一つは、開催に支障が出ないよう、新型ウイルスは我が国において、アンダー・コントロールですと言おうとしたあまり、随所で政治的な判断を遅らせたこと。


もう最近はお金も体力もなくなってきて、滅多に海外旅行にゆかなくなりましたが、上掲の写真は十数年前にギリシャとイタリアに行ったとき、アテネパルテノン神殿で撮影したものです。古代の遺跡を何日かかけて巡りました。生涯の思い出です。

今年3月ごろから、外勤がめっきり減りました。お客さんとの打ち合わせ等が次々とキャンセルになり、勉強と仕入れの機会であるセミナーや研修も、ここ東京では全て中止になりました。そんなわけで、普段ほとんど見ないテレビを眺めていたら、アテネで聖火の採火式をやっていました。3月12日のことです。


昔話から始めますと、1964年の東京オリンピックは、幼稚園に入る少し前に開催され、親に言わせると小僧の私は、白黒テレビにかじりつくようにして見ていたらしい。それ以来、オリンピックは好きなのですが、かつてのアマチュアリズムの大運動会は様変わりし、今やプロがどんどん出てきて、スポンサーもどんどん付いて、ビジネス展示会のごとし。

それでも東京が立候補し、決定し、私としましては還暦を迎える年に、おそらく人生最後の機会となるであろう、自宅から日帰りで行けるところでオリンピック・パラリンピックをやるというのだから喜びました。人気の競技は高値だし抽選だろうから、マイナーな競技会場に行って、当日券の自由席でのんびり楽しもうという魂胆でありました。


徐々に様子がおかしくなったのは、エンブレムの著作権騒動からだったでしょうか。続いて、当時のIOC委員の本人だか息子だかに、日本の広告代理店が裏金を渡した疑惑が持ち上がり、収賄側はインターポールに国際指名手配されたものの、どこかの国に逃げ隠れて出て来ない。あれはまだ解決していないのではないか?

皇族の末裔を名乗る者が、責任ある地位を辞退しましたが、上記と別件かどうか知りません。知りたくもない。金の匂いばかりか、お江戸の海も異臭騒ぎでトライアスロンの選手に迷惑をおかけし、極めつけはマラソン競歩の灼熱地獄クライシス。札幌で開催する代替案で一件落着したかにみえた矢先でした。


アテネに聖火がともった3月12日は、その前日にWHOがパンデミックを宣言したというタイミングです。もしや緊迫ムードが漂ようのかと心配していたら、早くも翌13日には聖火リレーが中止になってしまった。時事通信等が報道していますが、これまた懐かしい名前のスパルタにおいて、聖火に人波が押し寄てしまった。パンデミックを気にしたのだろう、リレーは中止で聖火は人手を離れ、船か飛行機か、乗り物に乗って日本を目指すことになった。

この前日、すでに3月12日にはもう日本政府と東京都が延期にむけて動き出した。NHKがそう言うのだから間違いあるまい。どうやらIOCに対し「中止」は避けたいので「延期」にしてくれと頼むとともに、あのお喋りで気まぐれなアメリカ大統領に、因果を含めたかったらしい。繰り返しますが、スパルタより前です。事態の悪化を早めに防ぎたかったのでありましょう。


IOCは3月17日に臨時の理事会を開き、予定どおりの開催で合意した由。そのあと二転三転して、「完全な形」での開催が無理なら、一年延期もやむを得ないと、総理が認めたのは3月23日(月)。あの三連休のあとだ。このあとNHKは何度も、国民の「三連休の気のゆるみ」を強調しているが、「東京大会は予定通り」であると政府・東京都公認の時期だったことを、ゆめ忘るることなかれ。

わが都知事も3月25日、準備局のサイトで、一年後なら安全安心だと安心している。これら預言者の予知能力の程度は、そう遠からず判定できます。それにしても、上記のNHKの報道は、私が思うに大事な要素が欠けている。なぜ「完全な形」を、23日の時点であきらめたのか。


この話題は重いので、いずれ改めて続編を書きますが、今回は最後に、「いい加減にしろ」と言ったお方の話を残しておきます。今後の情報源は共同通信。3月17日にロイターが報じたそうです。今回のコロナ騒ぎ、全般に女性のほうが切れ味鋭い見せ場を作ることが多い。

ソチ冬季五輪のアイスホッケー女子でカナダの4連覇に貢献、夏季大会にもソフトボールで出場し、現在、IOCの委員を務めるへーリー・ウィッケンハイザー氏は3月18日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京五輪を予定通り開催することは「無神経で無責任な行為。この危機は五輪よりも深刻だ」と自身のツイッターで非難した。


余計なお世話をやくと、「この危機は五輪よりも深刻だ」というのは原文からして、新型ウイルスの危機の深刻さは、オリンピックの壮大さを上回るというような語感です。

このあと3月23日、カナダは東京オリンピックパラリンピックへの選手団の派遣を中止すると公表。日本側は同日、とても「完全な形」とは言えなくなったらしく、TKOのタオルを投げたのだと私は思う。それにしても、「完全な形」って何だろう。



(おわり)




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パルテノン神殿  (2006年5月24日撮影)



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【追記】「緊急性の高い症状」について

 4月28日、全国紙や通信社のネット・ニュースに、厚生労働省新型コロナウイルス感染症の「緊急性の高い症状」を公表したという記事が出ました。重要な報道ですが、社によって12項目あり、または13項目ありで、バラツキがある。これは情報源となった厚生労働省の4月27日付「事務連絡」に一部混乱があって、本文と「様式2」が12項目、「様式1」が13項目だからだと思います。内容は変わらず、12項目のうち「肩で息をしている・ゼーゼーしている」を別々に勘定すると13になります。チェックリストはこれではまずいですから、13項目に統一した方がよいです。

「事務連絡」 
https://www.mhlw.go.jp/content/000625758.pdf

(おわり)
 

























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