今回は感想文のようなものです。繰り返し述べますが、私はメディカル・ドクターなどの医療職ではないし、医学生理学の研究職でもない。この病気の流行のような深刻な事態に、素人がいい加減なことを書き散らして、民間療法のシャーマンみたいになってはいけないことも弁えております。
それでも話題が話題だけに、専門的なことに関し、知らずして間違ったことを書いているかもしれない。自分で言うのも何ですが鵜呑みになさいませんよう。それなら、なぜ書くのかと言われたら、長いこと軟禁状態なので、おバカな行動に走らないよう、いわば瀉血が必要だからだ。
最後にお客さんに会ったのは2月の下旬です。今年に入ってから、家族と一度だけ外食しましたが、飲み会はゼロ。先月・今月に電車に乗ったのは、二か月ぶりの歯医者さん往復のときだけ。散歩だけはしますが、長くても二時間くらいで戻れる範囲内です。
テレビやネットで、ステイ・ホームと叫んでいる人たちは、それはそれで正しいメッセージなのでしょうけれども、いっぺん、これくらいの禁固刑を経験してから命令してもらいたい。言葉も表情も、まったく説得力がありません。自分たちは豪邸にお住まいで、仕事で大変だと思いますが、外出してそう語っているから、私ごときにイチャモンを付けられる。
さて、本日のストレス発散おわり。このブログでは、今年3月15日の第1218回に、イギリスのボリス・ジョンソン首相のスピーチを紹介しています。その翌日、彼は軌道修正しているのだが、その経緯も含めて、まずは当日引用した3月12日付スピーチを、在英国日本大使館が和訳しているので再度ご案内。
3月12日といえば、WHOのパンデミック宣言の翌日です。先述のとおり、日本では聖火の点灯式典が放映され、私が旅の思い出に浸っていたころです。その程度の認識でいながら、ブログにアップしたのは、この中でジョンソン首相が、こう語っているのに驚いたからです。
I must level with you, level with the British public, many more families are going to lose loved ones before their time.
(大使館の仮訳では、「自分は英国民に対して正直に言わなければならない,より多くの家族が,彼らの愛する人たちを寿命に先立って失うことになる」。)
オリパラ・ムードの日本では、たぶん誰も責任ある地位の政治家や報道関係者は、こんなこと言っていなかったと思う。当時だけではなくて、今だってそうだ。言霊の国ですので、病没者は合計人数か、芸能ネタか、気の毒なケースで匿名か、とにかく「あなた」に対しては言わない。
イギリス国民にとっても、相当な衝撃だったはずだ。英国在住の人たちのネット情報でも見ました。「パニック」という言葉を使っている人もいる。同首相がこのショック療法的な言動に出たのは、「その拡大を遅らせ,それによって被害を最小化する」ため。
そして、「明日以降,もしコロナウイルスの症状,つまり,新規に発症した継続的な咳や高熱が見られる場合は,それらが軽度であるとしても,少なくとも7日間家にとどまって他者を守り,感染症の拡大を遅くするべきである」ことを、捻じ込むように伝達したかったからだろう。
その後の報道をみると、このスピーチは英国内の医師や科学者から、相当の反論を食らったらしい。英国政府の戦術は、ピークを後ろにずらして、集団免疫を獲得し、それ以降の被害を防ぐというものだったというのが私の理解です。間違っていたら誰か教えてください。
この反論の中で一番分かりやすかったのは、出てきたばかりの新型ウイルスの抗体の効力が、長期間続くかどうかわからないというものだ。ここで自論を挟むと、2011年の原発事故以来、私は専門家という人達の主張を信じない。
これは彼らのいうことが全て間違っているという意味でもないし、専門家の人柄が信頼に値しないという意味でもありません。今がその渦中にあるが、人によって言うことが違う。そして原子物理学やら感染症疫学やらの専門的なことを言われても、その真偽を判断できるはずもなし。こういうときは専門外であっても、智者の言うことに耳を傾けた方がいい。智者は、こうなる前に選んでおく。
さて、元の話に戻します。反撃を受けて、ジョンソン政権は3月16日、方針変更を明らかにした。リンクを貼ったのは、3月12日のものと同様、英国政府のサイトです。明確に違うことろだけ選びます。「you should stay at home for fourteen days.」。この14日間というのは、入国管理等で今も使われています。どうやら潜伏期間は、この日数を超えないらしい。
イギリスは初動で出遅れたという人が日本にいる。他にもっと素早く動いた国があるという意味なら、事実関係はその通りだとしても、日本政府の関係者や専門家がいうのは、すこし無神経で無責任ではなかろうか。
印象としては、このジョンソン首相本人が罹患して入院し、集中治療室に入ったので、手際の悪い国という評価が生まれたのかもしれない。幸い彼は戻って来た。まだ入院中の4月12日に、彼が病院から発信したスピーチは記憶に新しい。
世話になった人たちに名前を聞いて回ったらしい。とくに48時間にわたり彼の病床脇でスタンバイした看護師二人は、出身地入りで紹介し謝辞を述べている。ニュージーランドとポルトガルか。英国では、外国人さんが体を張っているらしい。
上記ジョンソン首相のショッキングなコメント(親しい人が、まだこれからというときに命を落とす)については、後にエリザベス女王が、「we will meet again」と言い足して和らげた。おまけに伝言の相手はUKだけではなくて、コモンウェルス全体に向けて語りかけており、やっぱり大英帝国なのだ。
また、女王陛下は「Better days will return.」とも語りかけておられる。どの時点と比べて、良くなるのか、言うまでもない。失われた生命や、ひどく傷ついた人の心は、元に戻ることはない。しかも条件が付いています。この努力を続けている間も、お互い慈しみのこころを忘れないように。お釈迦様と意見が合っています。
上野公園 (2020年3月15日撮影)
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