7月22日から「go to トラベル」なるキャンペーン事業が始まりました。私はそんなお金と時間の余裕がないし、第一、都民なので除け者にされており、たぶん無縁のまま終わりそうだが、何かと騒ぎになっているので、やはり触れます。東京も大阪も、新規の陽性報告者数が過去最多を記録したと報道されたばかりで、まことに間が悪い。
最初に際どい資料を見ておきます。わたしたちは個人にとって大切なものとして、よく生命財産という言葉を使います。COVID-19は、生命や健康にかかわる疫病であるとともに、財産や収入・雇用・事業の継続等の経済にかかわる社会問題でもあります。ではデータを一つ。「令和元年中における自殺の状況」(警視庁・厚生労働省)
この第25ページに、「表6 職業別、原因・動機別自殺者数」という図表があって、原因の一位は、「健康問題」、二位が「経済・生活問題」。他の資料をみると、毎年この順番です。こういう図表は、積分で読む。戻ってこない。
ちなみに、三位の「家庭問題」もコロナ禍に無縁ではない。本年度にこれらの数値が悪化するのを極力防ぐためにも、やはり健康問題と経済問題は、どんなに難しかろうと両立を図らないといけないです。ネットの書き込みをみていると、少なからずの綱渡りの人生。
しかし省庁も学者も、たいていこのどちらかを専門領域・担当分野としているから、片方の重要性を説くことになるのは当然のことで、あとの舵取りは国や地方公共団体のリーダーの役割です。
ちなみに日本港憲法には、第三章の「国民の権利及び義務」において、第13条に生命、第29条に財産権が我らの権利として規定されている。ついでに第15条の第1項と第2項も拝読します。衆議院サイトより。
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
通称「go to キャンペーン」は、このうち経済問題に直接対処する事業として、本年6月22日に成立した第一次の補正予算に盛り込まれました。財務省の資料があります。
そのうち一般会計予算の補正の解説のなかで、第(9)ページに、「3 次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復」という項目があります。その大半の金額が「( 1 ) 観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業等に対する支援」に計上されています。
この予算総額は1,679,443(百万円)。およそ1兆6794億円。上記の「次の段階」とは、「新型コロナウイルス感染症の拡大が収束した後の一定期間に限定して、官民一体型の消費喚起キャンペーンを実施するために必要な経費」という続きの文中に出てきます。補正予算も、その年限りとはいえ法律です。逆らったら、法律違反です。
この順序(収束後に消費拡大策)については、国会に法案として提出されるに先立ち、本年4月7日に閣議決定されています。経済対策は二段階に分けて行い、第一は、感染症拡大の収束に目途がつくまでの間の「緊急支援フェーズ」です。
そして第二は、収束後の反転攻勢に向けた需要喚起と社会変革の推進、いわば「V字回復フェーズ」であり、早期のV字回復を目指し、観光・運輸、飲食、イベント等大幅に落ち込んだ消費の喚起(後略)とありますから、これが「go to キャンペーン」を指しているはずです。
内訳については、以前も引用した国土交通省の資料が分かりやすく、その最終ページに同じ金額(1兆6794億円)のキャンペーンとして、「旅行」、「飲食」、「イベント」、「商店街」の四本柱になっています。もう民間事業者等への外注が決まっている。
それぞれ、主に与党なじみのトンカチ官庁たる国土交通省と観光庁、農林水産省、経済産業省、中小企業庁が担当して効率的な行政運営をしつつ、委託先とともに国家予算を山分けします。
ついでに、報道機関の解釈も確認すると、時事通信のまとめた図も、同様の中身です。
基本的には、今となっては懐かしいお肉券やお魚券と似たような発想ですよね。これでは収束に向かっている段階でなければ、国民の怒りを買いかねないというリスクがあります。それにこのキャンペーンの利用者は、お金持ちほど潤いそうで、逆進課税的です。
上掲の閣議決定と補正予算案成立の中間点になった5月25日に、国の緊急事態宣言と、都の東京アラートが解除されました。確かにこのころ、関連の数値は私程度の者から見ると、改善しつつあるかに思えました。されどそのあとで、前回の東京都のグラフにあるように、私程度の者でも分かるほど、不気味な上り坂が始まっています。
7月10日、朝日新聞ほかの報道にもあるように、当初は8月ごろからかと言われていた「go to キャンペーン」を7月22日からに繰り上げて実施すると政府が発表しました。以前このタイミングは、梅雨明けだからだろうと書きました。
一方、周知のとおり暦でいうと、2020年オリンピック・パラリンピックの開催時期に合わせて、海の日を繰り下げ、体育の日を名前と日付まで変えて7月24日にしました。ここまでは、いろいろ止むを得ない事情もあるだろうとみていた私ですが、大会が延長になったことで「スポーツの日」が、このままでは記念日になれない。来年、同じ日程でやると頑固に申しておるのはこれが理由です。
こうなると、折角オーダーメイドで作ったこの四連休がお手隙になり、政府と関連業界には魅力的に見えたらしい。その前日、7月22日にキャンペーンを始めれば、仕事やら学校やら終わってから繰り出す人たちも増えようというものです。しかし、立ち上がりで躓いたのはご承知のとおり。我が東京都が、ウイルスの培養地のようになった。
私にとって特に気の毒なのは、いつもお世話になっているJR東日本です。先日、JR新宿駅前を通り過ぎたところ、「わたしたちは東京大会の公式パートナーです」というような、ポスターだったか看板だったかを見ました。大会に向けて大車輪の準備をなさったことでしょう。それが延期になったばかりか、東京発着の旅は補償すら、なくなった。
それが決まってから、東京都知事からは早速、「四連休中の不要不急の外出は自粛あそばせ」との命令が出た。前回の論調でいえば、家庭内感染だけは可とするらしい。
今や、COVIC-19 は、ひと気のない屋外が一番、安全安心なのではないかと思っております。さあ都民はどう出るだろうか。生活の保障がなければ働くだけです。小池君からは、自粛から自衛に切り替えてくれと言われたばかりだ。
国は相変わらず三密を避けよとのみ忠告なさり、かたや都は自宅で我慢せよと言い張ってみえるのですが、みんな少し手前勝手すぎないか。総人数のデータと支持層の利害損得しか目に入っていないだろう。「一部の奉仕者ではない」と憲法が定めているのに読んでいない。
この混乱を収拾すべき政府首脳は、どこかに隠れて病気から逃げでおいでか。ちなみに我ら零細のフリーランスらは連休だろうと仕事です。行動も公私兼用で出かけることが多く、不要も不急もない。エスタブリッシュメント用の人柱になるつもりはありません。ではまた。
(おわり)
夕方に咲いた、うちの朝顔 (2020年7月22日撮影)
.