おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2月28日 WHO-中国合同ミッション報告書  (第1233回)

今年2月の終盤は、これまで挙げてきた出来事の連続で日本全国が大騒ぎになり、掲題の報告書の件はほどんど話題にならなかったという印象を持っています。内容が専門的ですし、数十ページもある取っ付きにくいものですが、今回はこれに取っつく。

2月後半にWHOと中国政府が、新型コロナウイルス対策のための合同現地調査団を派遣しました。英語版はWHOのサイトからダウンロードできます。報告書の公表日付は、2020年2月28日です。


日本語版報告書は厚生労働省のサイトから探すことができます。このページの「新型コロナウイルス感染症について」に、公表和訳と、概要仮訳と、WHOのサイトの紹介があります。

報告書全文の公表和訳は、ここであと二回クリックすると出てきますが、本稿は専門的な調査内容まで踏み込むものではありませんので、「概要・仮訳」を拝読します(以下、「概要」という)。仮訳となっているのは、たぶんWHOが概要版を公表していないからだと思います。


この「概要」によると、調査団員は全25名で、WHOと中国からそれぞれ共同団長が出ており、日本人一名も含まれています。国立感染症研究所のお方のようです。日程は2020年の2 月16日から24日までの9日間。調査方法は「医療機関交通機関、調査機関等の視察を含む武漢や北京等への訪問、中央・地方政府関係者、医療関係者、科学者等との議論」。

報告書の構成は項目名でいうと「任務」、「主な調査結果」、「評価」、「主な勧告」の4点からなります。「任務」のうち、「目標」は簡単にいうと、これから中国はどうするつもりなのか、その計画を把握し、国際社会にも周知する。「目的」は、COVID-19 に関する理解を深め、知見を共有し、勧告を作成し、連携のための優先事項を確立すること。


「主な調査結果」のうち、中間宿主についてはコウモリかどうかも含めて不明。これを書いている現在も、主に米中間で論争が続いています。お互い何をやっているか知っているからねえ。

 私どもには、次の感染経路が重要です。「主な感染経路は飛沫感染と濃厚接触感染であった。空気感染は報告例なし。糞口経路、エアロゾルによる感染は主要経路ではない。他方、中国では、人から人への感染の大半(クラスターの約8割)は家庭内で発生した」。


家庭内が8割。いま私たちが隔離されている場所です。先月末以降、子供もいます。症状があるのに検査が受けられない人もいます。病人なのに入院できない人もいます。通勤電車も危ないですが、濃厚接触感染とくれば何より家庭です。拙宅では、消毒と手洗いが仕事よりも多忙なほどだ。

そして、空気感染は報告例なし。その割に現在、「感染性が高い」と多くの医療関係者が言ってみえるのが気になります。これについては、別途、考えたい。これに続く症状の項目には、「無症候感染者は少なく主要経路ではない」など、その後の知見とは異なる部分もありそうなので深追いしません。


次の「評価」については、簡潔にいうと「中国はよくやった」。ただし、「感染流行初期における迅速な対応、流行期における対応能力の強化、ヘルスケアワーカーの適切な保護、重要なデータの国際的な情報共有等を含む公衆衛生危機対応については改善の余地がある」という点が教訓として挙げられています。そして、「国際社会の大半は、中国で採られた措置を実施する用意ができていない」。

この評価を踏まえた、「主な勧告」の中で、日本も含まれる「COVID-19 発生国及び/又は流行国向け」の勧告を見ます。全体に仰る通りなのだろうが、前回の続きということで5点あるうちの⑤、「必要に応じて感染経路を遮断するための更に厳重な措置(例:大規模集会の延期、学校及び職場の閉鎖)を展開するためのマルチセクターによるシナリオ立案やシミュレーションを実施する」。


これに沿って、学校についての勧告は何なのかと考えると、学校を閉鎖する措置を展開するため、教育当局や専門家会議とともに、そのシナリオやシミュレーションを実施するということだと推察します。2月27日の日本政府は、これらをすっ飛ばして全国一斉の学校閉鎖要請に踏み切りました。

反論が来そうです。この報告書が公開されたのは、学校閉鎖の要請が出た2月27日の翌日28日のことである。しかし私は思うのですが、調査はすでに24日に終了しており、報告書のとりまとめ段階において、WHO本部にも調査団にも日本人がいるのに、何の速報も届いていないということがあり得ますか。あったら困る。


繰り返せば、安全衛生は安全策が何よりですし、本件は特に迅速さが求められますから、早めに手を打つというのは、総論的には適切です。それ以外に優先度の高いことがなければですが。医療体制の充実とか、検査の徹底とか、他の国がやっているようなこと。加えて家に子供を閉じ込めることの副作用はないかどうかの検討。

副作用の心当たりといえば、これからしばらく子供が家に滞在する時間は各段に長引くし、そのため働く時間・日数が減る大人も家にいる。おそらく、これが一因だと思うが、2月28日は全国的に、トイレット・ぺーパーが店頭から消えた。

なぜ日本政府の中枢が学校閉鎖について、こんなに慌てたのだろうという件については、一つ、勘繰りがございます。この合同調査が終了した2月24日、中国では史上初めての国家レベルの動きがあった。3月5日に開幕予定だった全国人民代表大会全人代、日本でいえば国会に相当)が無期延期されている。わが身、可愛し。



(おわり)


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ハナモモ  (2020年3月1日撮影)





























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