本日(9月1日)は防災の日であります。以下、書き記すことの殆どは、かつてここで書いたことがある話題ですが、天災が忘れたころにやって来ないようにするためのリフレインです。
明治生まれの母方の祖父は、関東大震災のことを「こないだの地震」と呼んでおりました。何と遠い世界か。当時、横浜の古くて大きな家に住んでいた親戚も、「この家は地震でも壊れなかった」と自慢していたのを覚えている。
若い世代におかれては、アニメ映画「風立ちぬ」で堀越二郎が汽車の中で揺れていた、あの地震が1923年9月1日に起きた。彼は大学生だったから、これで大体、いつごろ生まれた人か分かる。彼の場合は綺麗な娘さんと知り合いになれて不幸中の幸いでしたが、同震災の犠牲者は十万人を超える。正確な数が分からないというのも辛い。
東京大空襲の規模に匹敵しますが、いずれも爆死や圧死より、火事で亡くなった人のほうがずっと多いらしい。火は怖い。先日、30年ぶりくらいに「遊星からの物体X」を見ておりましたが、あいつさえ火には敵わない。実際は火より熱が危ないのかもしれないが。さて、多くの野生動物は火を当然こわがりますが、水も厭います。
なぜ、あんな遠く離れた水場まで飲みに行くのか不思議でしたが、湿気の多い土地というのは、ばい菌や毒虫も多いので、耐性のない生物は離れた所に棲む。
これは人間も同様で、高いところには何とかと煙のごとく、東京でいえば増上寺とか寛永寺とか東京大学とか、偉い人たちが陣取ります。皇居も高くて、これは江戸城が房総半島の水軍に対する砦だったかららしい。
今年(2018年)の日本は、水害の多い年です。7月の西日本の災害も苛酷なものでした。台風の上陸も多いし、これを書いている今も新作の台風が、こちらを目掛けて北上中。大きな被害が出なければ良いのだけれど。
私はかつて海外出張で、ココナツと輸入品のコカ・コーラしか無いような土地に何度か行っているので、日本の水の豊富さと衛生には感心するし感謝していますが、いつも空から安定供給というわけにはいかない。
これまでに二回、夜も眠れぬほどの大音響で雨に降られた経験がある。いずれも夜に大雨になったので部屋の中にいたのだが、雨粒が天井や壁を叩く音が凄くて、大声で会話していたのを覚えている。
どちらも大規模な水害を引き起こした。一つは、1982年7月の九州。大学の四回生で就職活動の時期でありながら、ためたバイト代で四国・九州への貧乏旅行に出た。
九州で最初に泊まったのが太宰府天満宮そばの小さな宿だったのだが、ちょうど梅雨明け前の寒冷前線が通過したのか、ものすごい豪雨になった。同行の部活の友人と、「明日、大丈夫かいな」と心配しながら寝たのだ。
やっぱり大丈夫ではなく、駅に行ったら「長崎本線 全線不通」というシンプルな看板が立っている。当時はネットもございませんで、行ってみないと分からない。
やむなく反対側の大分のほうに向かったのだが、この雨は特に長崎で大水害を起こし、それこそ見物予定だった眼鏡橋まで壊した。文句は言えない。一日、旅程が早かったら、どんなことになっていたか。他県も含め、大勢の方が亡くなったのだ。
もう一つは、その何年か前で、中学二年生のときに生まれ育った静岡県で起きた「七夕豪雨」による水害。こちらもその名のとおり、7月だった。実家のトタン屋根をたたく雨音が強烈で、しかも長時間、降った。
翌朝のニュースで、私が何度も乗ったことがある近くの麻機山の観光用リフトが、土砂崩れで下に墜ち、何人も亡くなったほか、静岡や隣町の清水が広域の洪水に見舞われているという。
幸い雨がやんでいたし、記憶では翌日は休校になった。母と歩いて様子をみにいったのだが、驚いたことに実家から数十メートルぐらいのところまで水が来ていて、その先はひたすら清水方面まで見渡す限り水浸し。あの光景は、忘れられるものではない。これが、さくらももこ「ちびまる子ちゃん」に出てきた大洪水。
1986年から91年まで、ロサンゼルスとサンフランシスコで働いていたのだが、当時はそれこそ物流も情報もITの恩恵が無く、別にそれを不便とは思わなかったが、里心がつく人も少なくなくて、出張者や赴任者に日本の物資を頼む人が多かった。
食べ物だと入管で引っかかることがあるので、迷惑をかけないよう本や日用雑貨が多かったように思う。今なお泣けるのは、前年の紅白歌合戦のビデオを持ってきてもらって、映写の会に呼ばれた。B.B.クイーンズをサンフランシスコで初めて観た。もろに、バブリーです。
日本人会で、誰かが日本から取り寄せた、ちびまる子のコミックスを3巻ほど貸してくれたのを覚えている。日本人会はどこへ行っても私には退屈なので、マンガを読んでいた。
この時に初めて、まる子を読んだはずだ。途中で思わず笑ってしまい、お前でも声をたてて笑うことがあるのかと言われました。「まるちゃん、まるちゃんって、わたしはラーメンか」という箇所だった。作者のご冥福をお祈り申し上げます。
(おわり)
嵐の夜も明けた朝 (2018年8月24日撮影)
Life is a series of hellos and goodbyes.
I'm afraid it's time for goodbye again.
”Say Goodbye to Hollywood” 雨の降る夜には Billy Joel
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