おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

警察国家  (第1003回)

 しばらく前に、妙なことに気が付きました。このサイトは、右下の「ページビュー」という欄に、アクセス数の累計が表示される。あるとき、下書きをアップして、十秒ぐらいしてから何かの拍子で更新してみたら、この数字がいきなり10余り増えていた。わずか十秒程度である。そのあと何回か試してみたら、やはり判で押したように凡そ「十秒で十人」の急増が毎回起きる。

 この僅かの時間内に、投稿を心待ちにしてくださる方が10名ほどいらして、一気に手動でアクセスなさるはずがない。毎回似たような事態が発生するということは、このご時世、まず間違いなく自動的に新規の書き込みがあったサイトが開けられて、中身を検閲されているに違いない。


 例えば公序良俗に反する写真・動画とか、犯罪行為の予告などのキーワードとかがないか、最初にITで調べるのだろう。すると、このブログではテロリストとか人類滅亡とか、私のせいではないが危ない単語が頻出する。どなたが最終チェックしているのか知らないがご苦労様です。今回も、なるべく注意しますが、あれこれ面倒かけます。

 映画では2015年(漫画では2014年)以降において、日本は監視社会になっている。テレビはプロレスやバラエティだけのようで、ラジオは何も流れていないはずであり、しかも当局のスパイがそこら中にいる。外見上は昭和時代に戻したらしいが、あれは60年代ではなく、戦前戦中の日本だろう。知らないうちに今のわが国も、そういうことになっていないか。もう、なっているだろう、多分。


 さて。これから書く程度で発禁になったら、この世も末だ。ショーグンが、人質になった日本人観光客に「おまえなんか、死んでもいい」と言うシーンは映画にも漫画にも出てくる。あのヒューマニズムに溢れ、冷静でないとき以外は至って冷静な将軍様のお言葉とも思えないが、事情は多少、漫画のほうが詳しい。相手の少女は14歳だった。

 加えてショーグンは、「どうなっちまったんだ、あの国は」と日本の現状に呆れているのだが、2000年ごろ何が問題だったのか、若い世代のファンはそれほど詳しくはご存じあるまい。以下、読んで不愉快になったらごめんなさい。


 過度に自信を喪失している現代のこの国では、いかに日本が素晴らしい国か、日本人が優れた民族かという内容の書籍やネット情報があふれている。国内のニュースをちょっと見れば、それほど素晴らしくもないと分かるだろう。

 ところが、そういうのはごく一部のアブノーマルな奴の仕業であることになっている。単純な人数割合からすればそうかもしれないが、人間、そう簡単に個人単位で白黒つくものでもあるまい。


 以下は20世紀が終わるころ、東南アジアのある国のホテルの事務室で、接客担当の中間管理職の女性と商談している最中に、直接聴いた話である。大手のホテルだから、当然、客室内での不法行為はご法度である。しかし密室だけに、いくら厳しく取り締まっても限界があり、特に当時は外国人観光客が現地の若い娘を、非公式の「ルーム・サービス」で呼ぶのに手を焼いていた。

 何せ、そのために旅行に来るようなものなのだ。ショーグンが癇癪を起すのも無理はなく、だからといって財布ごと寄越せというのも凄いが、とにかく、ここでロリコン野郎と呼ばれている背景事情は、実に浅ましいものであると聞いた。その当時、アジア各国に急激に蔓延し始めていたエイズに、売り手側が感染している確率は、年齢が低いほど小さいのだ。


 そのホテルの従業員さんは、きりがないので騒動さえ起こさなければ目をつぶらざるを得ないと我慢していたそうなのだが、ある夜、年若い少女に「こんなお金しかくれない」と泣かれて見せてもらった紙は、米ドル紙幣の粗悪なオフィス・コピーで、裏は白のままだったらしい。さすがに客室に殴り込み、ちゃんと払えと交渉したそうだ。オッチョの職業倫理と相通ずるものがあるな。

 ちなみに、上記の出来事の男のほうは日本人ではなく、ただいまパナマかどこかで流出したTAXヘイブンに関する報道の統制に忙しい某国からの御来客だったそうだが、もちろん我らの同朋も、同じ穴のむじな。その一世代前においては、隣の半島国家に同じ目的で行くツアーが流行った。慰安婦問題は、決して遠い昔の怨念だけを引きずっているのではないと思う。


 「おまえなんか、死んでもいい」よりも激しかったのが、われらの「はてなダイアリー」(祝上場)が発信元になったらしい保育園がらみの「日本死ね」だった。これについて、まず保育施設の現状には余り詳しくないのだが、身近で直接、親御さんから聴いた話だけでも記録しておこう。おそらく、あちこちで同じことが起きている。二点ある。

 一つ目は二年くらい前の春、働く母親から中間報告を受けたもので、彼女が一歳児を預けようとしている近所の保育園は「ポイント制」で(それまで私は知らなかった)、今のところポイントが不足しているため、夫婦そろって勤め先相手に、労働条件を厳しくしてもらう交渉をしているのだと苦笑いしていた。何とか笑顔を作れるのは、何とかなりそうなところまで来たかららしい。


 もう一件はこの4月からの保育所申請のため、今朝は日の出前から並びましたという若いお父さんの苦労話を聞いたばかりである。早い人は二日前から並ぶらしい。かつてはポイント充分の人以外にも枠があると、抽選だったそうだ。しかし、並んでいる人から「不公平だ」という声が挙がり、受け付け順も加点対象になったらしい。想像していた以上に、えらいことになっているのだ。

 しかし、「死ね」は止めましょうぜ。他にも、社会人の女性から聞きたくない表現が幾つかある。男ならいいのか、という反論は却下。最近、道端や公園で擦れ違う若い母親が子供を叱る言葉遣いの荒さに、うんざりすることがある。現実問題として、たいていの家庭では乳幼児との接触頻度が、母と父では段違いであるはずだ。間違ってもあの調子で、これから言葉を覚える子供に、八つ当たりなさいませんように。

 それに私は日本が好きなので、死ねと言われたら良い気持はしない。例えそれが政府のことを言っているのだろうと想像しても、やはり止めてほしい。日本というのは単なる法人たる国の名称ではない。この陸と海と空、住んでいるわしら全部ひっくるめて日本だ。自分に向かって言われている気がする。そして、どうもそれがあながち間違いではないように思う。


 本件は国会で取り上げるまでの事態に発展した。内閣総理大臣安倍晋三君におかれては、報道によりますと、匿名である以上、本当に起きているかどうか確認しようがないと答弁なさった由。ほう。仮に私が匿名で首相官邸を...と書いたら、間もなく脅迫か何とか未遂の疑いでとっ捕まるだろう。罪状は豊富にあり、名誉棄損とか強要とか威力営業妨害とか、匿名希望が大勢つかまっているではないか。

 聞いた範囲では野党も、そういう追及の仕方をしておらず、これは万が一、自分たちが与党になったら同じことをするので、穏便に済ませておいたほうがよいのだな。今回はアップ直後の即時アクセスが十件では済まないかもしれない。私のマイナンバーには、「前科」の記録が山積することだろう。盗用されなくて安心だ。




(この稿おわり)






せめて写真で、平和な人間であることを強調しないと...
雨上がりのクローバー
(2016年4月3日撮影、以下同じ)




上野東叡山 寛永寺根本中堂




紅白八重桜













 People are crazy and times are strange.  

      ”Things Have Changed ” Bob Dylan







































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