おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

私はゴジラ (20世紀少年 第896回)

 先月、静岡県の焼津に行ってきました。恩師の告別式に出たのである。私自身は仕事の関係で出席できなかった今年正月の同窓会に、先生は出てみえたと聞いていたので、では久々に来年お会いしようかと思っていたら、また痛恨の判断ミスをやらかしてしまったのだった。

 それに去年の春には、もう少ししたら会おうと思っていた焼津出身の友をガンで亡くした。日本書紀によればヤマトタケルが活躍したという由緒ある地、焼津にまた辛い思い出が増えてしまった。偶然だが彼女のお墓は、ご親族が東京住まいなので拙宅のそばにある。ときどき近くを歩くときに立ち寄って手を合わせる。


 この焼津では私が生まれる数年前に、こんな個人的な出来事とは比較にならない大事件が起きた。私が小学生になっても、何度もテレビの地方局で報道していたから、特に地元では大変な騒ぎだったのだろう。広島長崎以降、東電福一以前にも日本人は別の形で被爆している。第五福竜丸というカツオ漁船の乗組員全員が。

 ずっと前にかつての宗主国が植民地に残したものといえば、イギリスは教育とインフラ(これは的を得ていると思う)、フランスは料理(カンボジアのフランスパンは美味かった)、日本は農業と勤勉さ(今や教えてもらうほうかもしれん)、そしてアメリカが拝金主義だという。


 その典型がマーシャルだと、この国に出張を何度もしていた先輩が、この植民地土産話を教えてくれた。今のマーシャルが本当にそうなのかどうかは知らないのでご注意ください。それに日本の植民地だった時代もあるので、余り人のせいにしないほうが無難である。それに今の日本にはびこる拝金主義は、何よりこの国が戦後長いことアメリカの属国みたいなものであり続けたという側面があるからではなかろうか。

 ともあれ当時のアメリカは、そのマーシャル近辺で繰り返し原爆・水爆の実験を行っていた。原爆実験では大戦後に日本から奪い取った戦艦長門を標的にして沈めた。長門旅順港で広瀬が探しに戻った杉野の息子が、最後の艦長を務めている。織田信長は戦勝後、当時は常識だった支配地での略奪を厳禁した。その格調に天地ほどの差がある。


 第五福竜丸は、アメリカが水爆実験でビキニ環礁に降らせた死の灰を浴び、逃げきれず死傷者を出してしまった。私はあのタイプの水着にビキニと名付けた者の気がしれない。誰かもっと他の良い名前を考え出してくれないものか。あの水着自体に異論はないから。

 放射能雨の話題は、ずっと前にこのブログでも出したと思う。毛が抜けるというので本気で雨のたびに帽子をかぶっていた子や、かぶれとうるさい親がいた。当時は笑っていたが、もう笑えないな(別の意味で、脱毛の心配はなくなりつつあるけれど)。間もなく地下核実験の技術が開発され、常任の安全保障理事国はますますやりたい放題になった。

 
 これらの水爆実験のせいで、せっかく太古の眠りについていたのに起こされて暴れたのがゴジラである。この夏、またアメリカではゴジラ映画を作ったそうだが、もはやリメイクか、「based upon a true story」か、シリーズものしか作れなくなったのか。幸いアジアやヨーロッパの映画界はまだまだ元気が残っているようだが。邦画も映画賞で受賞はするが、興行はどうなのだろう。

 ゴジラ放射線被爆によるためか、恐竜のくせに放射能入りの火を吐く大怪獣と化した。そこまでは良いが、なぜ寝起きが悪いからと言って日本を攻めた? こっちも被害者だぞ。最初からアメリカに上陸すべきだろう。余計な獣道を敷いてくれたおかげで、次から次へと怪獣が日本に上陸したり飛来したりと大変な迷惑を受け続けた。ところでゴジラは水陸両用で動く。両生類なのか。


 ゴジラに息子がいると知り、小学生のケンヂはゴジラはメスだったのかと即断し、しかもガッカリした様子であった。その後、彼が怪獣に興味を示した痕跡はない。だが、同じ映画を国際劇場とオデオン座で二回も観た姉キリコは、”ともだち”と山根の不始末の責任を一身に背負い、私はゴジラと名乗って罪滅ぼしの長い旅に出る。

 最後には新ゴジラに勝利する。さしずめ第7集のオッチョの表現を借りれば、信念が全てを克服した。ところで、あのときプールでケンヂ少年が抱いた信念の対象には、ジジババのクジをどちらが先に当てたかという興味深い係争が含まれている。バカね〜、男子って。問題は「子」の字が取れて「男」になっても、われわれは依然としてバカのままだから自他ともに困る。



(この稿おわり





桔梗一揆といえば私の好きな土岐一族。美濃の名門。
(2014年7月8日撮影)




















































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