おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

永遠の嘘をついてくれ (20世紀少年 第776回)

 ビートルズは私の成分表示だと前に書いたが、あと二人いる。もう何度も何度もここで引用した吉田拓郎中島みゆきである。拓郎の歌を初めて聴いたのは確か小学校の高学年のころだったかと思う。ただし本人ではなくてクラスメートが歌っていた「人間なんて」。当時の子供はマセていたのだな。

 中島みゆきを初めて聴いたのは高校生のとき。床屋さんのラジオから流れてきた「アザミ嬢のララバイ」、彼女のデビュー曲である。以来、この二人の曲は何十年にもわたり聴き続けている。いや本当にお世話になっております。


 ホンダは遠い昔の一時期、事業発祥の地が同じ浜松市であるヤマハを目の敵にして「ヤマハをぶっつぶせ」というスローガンみたいなものを掲げていたらしい。当時は企業規模において後塵を拝していたのだ。

 ホンダは私が生まれる前に、東京に本社を移してしまったので地元の企業という感覚は無いが、ヤマハは今でも静岡県でがんばっておられる。このヤマハ掛川市で開発した「ヤマハリゾートつま恋」で、高校時代に大規模なフォークソングのコンサートが開催され、文化文明とはあまり縁のない静岡も大騒ぎになった。

 当日は閉幕後も楽屋に引き上げた拓郎は徹夜で歌い続け、巻き込まれた南こうせつがその気力体力にはたまげたぜという話をしていたのを覚えている。その数か月後に同じ場所で開かれたポプコンで、中島みゆきが「時代」を演奏しグランプリを獲得して名を挙げた。


 もう20年ぐらい前になるが、当時の職場で毎年行われていた社員旅行の行先を、その年ヤマハリゾートつま恋に決めたのは筆頭幹事を務めることになっていたこの私の地元びいきのなせるわざ。職権を濫用してわざわざ東京から下見にまで行ったのである。

 ところが、出発の10日程前に拙者は肝炎を発症し、高熱で一週間ほど会社を休んでしまった。産業医から3か月間の残業・出張禁止命令が出てしまい、社内旅行なんてとんでもないということになり幹事を外された。天罰とはこういうものを指すのであろう。


 そのつま恋で2006年に吉田拓郎たちが行ったコンサートの模様がDVDになって売られている。私らの世代が買うんだろうな。懐かしい歌の数々に交じって、これで初めて聴いたのが「永遠の嘘をついてくれ」である。最初にちょこっと拓郎が歌い、紹介されもせず歓声に包まれて登場したこの歌の作者が、途中で交代してボーカルを引きつぎ、拓郎はサイド・ギターに回った。

 二人とも長年歌い続けた歌手らしく実に太くて良い声をしている。最後は彼女が声量を少し落としてコーラスをつけて拓郎が歌う。曲が終わると拓郎は右手で持っていた白いピックを口にくわえて彼女と握手をし、黙ってお辞儀をして去りゆく人の名をようやく客に告げている。「中島みゆき」。拍手。この二人の共演を観られるとは、長生きもするもんだ。今はまだ僕たちは旅の途中だ。


 第22集の225ページ目。「ごめんな」とケンヂはカツマタ君に言った。50年ほど遅刻だな。黙っている相手に「ずっと後悔してた」とケンヂ、「よせ」と”ともだち”。ケンヂによれば、その一件はずっと心の中で「決着」つかないままであったという。本当かどうか分からない。すべて記憶が戻ったのは2015年ではなかったか。でも、この場面において最近まで忘れておりましたと言うわけにはいかない。

 再び「ごめんな」とケンヂ、再び「よせ」と”ともだち”は遮って、なんで、おまえ覚えてるんだよと怒った。私はケンヂの記憶力の悪さを最初のほうで随分からかった覚えがあるが、ケンヂに限らずわれらの記憶力など大したものではない。十年日記という、余ほど長生きしないと完結しないメモ書きのような日記をつけているのだが、1年前に書いたことすら殆ど覚えていない。


 ”ともだち”は、「おまえがあやまったら、全部終わっちゃうじゃないか」とケンヂをなじった。悪の大魔王に改心されたんじゃ、子供の遊びも終わってしまう。「もうおわりなんだ」とケンヂは”GAME OVER”を告げた。ところで、「ラブ・イズ・オーバー」は良い歌です。惚れた女にあんなこと言われたら、私だったら立ち直れないだろう。

 「俺達の遊びは終わりだ」とケンヂは言い聞かせるように土下座したまま語り掛けている。そのころ神様はボロ傘だけの天幕でホームレスらしく寝ていたのだが、ついに予知夢の最終段階になりそうな夢をみたらしい。

 ガバッと起きた神様は「夢、見た。どっちが勝つかわからねえが、もうすぐ終わる...」と宣託した。壇ノ浦は復元された学校の校庭。”ともだち”の頭上に、元の校舎からドンキーが見上げた満月のように円盤が浮かんでいる。



(この稿おわり)





夏空 (2013年7月10日、近所にて撮影)







好天が続いて梅干しも仕上がりました。 (2013年8月8日撮影)










 君よ、永遠の嘘をついてくれ
 いつまでも種明かしをしないでくれ
 永遠の嘘をついてくれ
 出会わなければよかった人などないと笑ってくれ


   作詞作曲: 中島みゆき
   うた: 吉田拓郎
















































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