おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

一つ目の円盤の終わり (20世紀少年 第775回)

 第22集の182ページから再開します。何だか懐かしいな。ユキジらが高須幹事長の部屋に乱入するシーンである。瀬戸口ユキジは戦い続けてきた。第10集、2014年、歌舞伎町のラーメン屋「七龍」にて、神様はユキジに「知ってるよ、あんたはこのまま引き下がるような女じゃない」とラーメンを頂きながら予知している。

 2000年以来、ユキジは戦い続けてきた。ケンヂのように逃げもせず、オッチョのように捕まりもせず、ヨシツネのように泣きもせず、カンナのように暴発もせず、モンちゃんのように死んだりもせず、ユキジは長い闘いの道のりを歩いてきた。その終点かと期待した幹事長室で、空飛ぶ円盤2枚を目にしたユキジは高須の胸倉をつかみ、襟の位置が良いからそのまま投げ飛ばせばよいのに、「止めなさい!」と叫んでいる。


 高須は動じることなく、「私には止められないわ」と答えている。嘘ではないだろう。この気の強い女がユキジから少し視線を逸らして、ちょっと寂しげにして見えるのは、リモコン争奪戦まで企画立案した段階までで活躍場面が終わり、世界征服の指揮命令系統から外されてしまったのだ。今や”ともだち”にとって、高須などどうでもよろしいのであろう。思えば万丈目あっての高須であった。自滅みたいなものだ。

 友民党トップの高須が止められないなら、その上役しかいないとユキジは判断したようだ。「”ともだち”はどこ?」と次の質問を浴びせたが、相手は「”ともだち”から全部聞いたわ。悪いのは全部、ケンヂ」とユキジには理解不可能なことを言い出した。


 いや正確には、「まだそんなことを」と怒っているので「よげんの書」の続きのことかと勘違いしたのだろう。高須は目が座っている。「ケンヂに正義の証を持つ資格はない」とユキジに語った。正義の証?といぶかるユキジを相手にせず、高須は窓の外、燃え盛る東京の町を指さして、「”ともだち”はあそこ」とようやく第二の質問に答えた。

 火事の火元は夜の街を行く巨大ロボット第2号だ。そいつは、やがて広場を離れ、常盤荘の前で急停止した。そしてユキジや高須が知る由もないが、操縦室では慣性の法則により頭をぶつけて流血沙汰になったオッチョが二機の円盤を確認した。狙いの獲物である。


 ブログ連載の間が空いたので繰り返しになるが178ページに戻る。ともだち府のコントロール・ルームらしき部屋で、ヤン坊とマー坊が何やら焦っている。どうやら円盤が飛び立つのを防ごうとしたらしいのだが、マー坊の指紋認証が反応せず、暗証番号は忘れてしまったらしい。二人がノロノロしているうちに、円盤は離陸してしまったのだ。

 次は着陸させようとする姿が221ページに出てくるが、あろうことかナビゲーション・システムにロックがかかっている。ロボット内でも自動運転が解除できず、オッチョが苦労していたのだが、ヤン坊マー坊はさらに恐ろしい物を見た。円盤は3機とも万博会場に向かうようセットされているという。

 ただし、なぜかそのうち1機は道草して”ともだち”の頭上に停泊している。そこに向かって「グータララ、スーダララ」を歌いながら愛用のヘリを飛ばしているのは田村マサオである。「決着をつけるんだ、俺の人生の」と深刻なお顔。


 ロボット内ではオッチョが強引に砲塔を手動に切り替えたようで、「ガコンッ」という音と共に動いたロボットの砲はようやく円盤の一つに向けられて、レーダーがその姿をとらえた。「落ち着け、失敗は許されない」と自らを鼓舞したオッチョは第一発を放った。命中。爆発。「よし!!」とオッチョ。

 しかしなぜか自動操縦のはずの、もう1機の円盤がその場からスタコラ逃げ出したのだから驚いた。有人飛行なのだろうか?? 次の砲弾を装着している暇がないと判断したオッチョは、もう一つある砲台に向かってロボットの頭の中を走る。

 それにしても、本当に円盤に最終ウィルスが積み込まれているのであれば、むやみやたらと撃ち落しては下にいるであろう人たちが大変な目に遭うのではないかと心配するわけだが、最後の最後まで漫画においては最終ウィルスはその猛威を振るうことなく終わっている。ハッタリだったのか? それとも、もうオモチャ箱を仕舞うときがきて、どうでも良くなったのか。



(この稿おわり)





ビョウヤナギ (2013年6月21日撮影)










高須...




























































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