おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

吉田所長 (号外・前半)

 今回は漫画の内容と無関係です。書きながら考えるたちなので紙面を使うだけ。ブログはこれしかないのです。原発推進派の皆さんにおかれては、読んでも気分が悪くなるだけだろうからご遠慮下さい。

 私自身の考えは半年ほど前に原発を話題にしてから何の進展もない。繰り返すと、事故が起きれば今の科学技術では大災害を防ぐことは不可能と考えざるを得ないので、原発など無いに越したことはないと思っている。

 他方で心配事が以前から二つあって、一つは現時点で原発を全廃した場合に、われわれの家庭生活や生産活動にどれほどの悪影響があるのか見当がつかないこと。もう一つは現実問題として大勢の人たちが直接間接、原発で生計をたてていること。雇用の問題である。


 今日のメイン・テーマは原発や東電の批判というより、大手マスコミの姿勢を問うものです。先ず、去年の今ごろは盛んに報道していた放射線量について最近は全く報じなくなったこと。不審である。

 理由を二つ考えてみた。一つ、もはや報道するほどの放射線量は消えてなくなった。もう一つ、政権が交代した。私も現役の社会人だから新聞やテレビのニュースは出来るだけ丁寧に追っているつもりなのだが、誰も教えてくれない。殆どの人が興味を失っているのではないか。


 ここからは昨日お亡くなりになった東電の第一原発の吉田元所長に関する昨夜から今朝にかけての報道ぶりについてである。マスコミ各社とも、彼の貢献度について異論はないらしい。少なくとも、言葉の上では。

 他方で、殆どの報道において付け加えられているのは、先ず70ミリシーベルトとかいう彼の累積被曝の量が死因の癌とは関係がないという見解と、もう一つは結果としてメルトダウンを防げなかったという点である。


 一点目の70シーベルトについて、二つの理由により疑わしい。一つは、これほどの原発事故は世界史上でも片手の指で数える程しかないはずなのに、このレベルの線量がなぜ癌と関係はないと言い切れるのか不思議である。24時間休まず被曝しているのだから、レントゲンの被曝とは事態が異なると感じるのだが。

 癌の発症は万有引力のような自然法則に従うものではなく、こうなると病気になりやすいという、医学薬学という一種の統計学で説明する他ない。事故を起こした原発所長の被曝データは、統計上で有意と明言できるほど豊富に記録があるのだろうか。


 二点目の疑問は、疑ったら切りがないと言われるだろうが、そもそも70ミリシーベルトという数字は正しいのか。この二年半、政府や電力会社が公表する数字や見識は、私のような保守的で臆病な人間は即座に信用したいという姿勢で臨んでいるのにも拘らず、間違いだったり隠し事をしていたりのオン・パレードではなかったか?

 せめて学者の先生方くらい信じたいものだが、物理も医学も地震学も百家争鳴で人によって意見が異なり、素人としては結局、専門家集団でさえ殆ど何も分かっていないに等しいなと覚悟せざるを得ない。


 吉田さんご本人は、被曝と癌の因果関係を認めておられなかったと報じられているが、思うに誠実な技術者であれば証明できない以上、そう語る他なく、言ったら最後、同じ現場で働いていた部下や関係者を強い不安に陥れるだけで何ら益がない。

 自然界にも放射能は存在するという遠吠えも聞こえてくる。だから心配も関係もないと言いたいようだ。自然界に豊富に存在する紫外線で皮膚癌に罹る人もいる。個人差が大きいことを一般化しても、あまり説得力を持たない。

 逆に強いストレスは癌を招きやすいというのは常々新聞等で拝見する強力な仮説のはずだが、今回それに言及している報道は少数派のようだ。何としても偶然、早死になさったことにしたいのだろうか。長くなったので、もう一つの、結果的にメルトダウンを防げなかった云々については次回に書きます。



(この稿おわり)













































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