おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

基地と原発  (第1906回)

 最近、我が国の領土や領海で、米軍や自衛隊の事故が増えているような気がする。私は報道を通じてしか知り得ない事柄なので、事故の件数ではなく報道の回数が増えただけなのかもしれないし、偶然、私の目にとまった数が増えただけなのかもしれないが。

 一方で、何か国際情勢の現状と関係があってのことだとしたら、緊迫した状況が続いている東アジアのいざこざが原因かもしれず、私が心配なのは、スペース・シャトルまで犠牲になったと報告されている当事者の睡眠不足。単に睡眠時間の長さ短さだけではなくて、こんな状況下でオペレーションを続けていたら、ぐっすり眠れないのではないか。夜勤も増えそうだし。


 矢部宏治著「日本はなぜ『基地』と『原発』を止められないのか」(集英社インターナショナル)は、三年ぐらい前に買ったのだが読む機会がなくて、最近ようやく読んだ。まだ一回だけの読書で、私は消化不良気味でございます。それでも話題にするのは、多くの人に(借りてでも良いから)いっぺん読んでほしいと思うからだ。問題意識を高めるために。著者と意見が違ってもいいから。

 この本や著者に対して非難を浴びせている人たちの言い分に、「ノンポリのくせに」、「法律家でもないのに」という声があるようだが、ノンポリで、法律家ではないのは私も同じで、それでもこういうブログを続けてきたのは、有権者だから憲法の改正に一票分の責任があるからだ。ついでにいうと、矢部さんは私と同い年。


 いきなり題名にはない憲法を持ち出したのは、本書が前半において基地と原発を採り上げつつ、後半はアメリカとの関係と、日本国憲法を主題にしているからだ。前半は、まだしも物が見える米軍基地と原子力発電所がテーマで、写真や地図や図表があるから読みやすい。

 後半は文献学的になっているので、わが消化不良もそこで起きている。けれど歴史や憲法の勉強をしようとしたら文字情報が中心になるのは避けられないことだから、ここでくじけたらいかん。もう一回読まないといけない。なお、本書の利点は、参考文献が、最後にまとめてではなく、その都度出てくることだ。読書の幅を広げるのに役立つ。


 ちなみに、この本を買った動機は、基地問題に関わる。入門書が欲しかった。原発の事故は盛んに報道され続けており、軍事基地と比べれば、放射線やその影響といった自然科学(物理や医学)、あるいは、電力供給やうちの電気料金といった経済問題があり、私の日常生活に直結する。つまり、当事者意識が強い。

 他方で、米軍基地については正直に申し上げると、自分の暮らしに直接の関わりがなかった。横田の基地は、その近くに何年も暮らしており、通勤や私生活で日常的に近所をウロウロしていたのだが、知る限り大事故はなかったし、騒音に悩んだ記憶もない。なお、念のため、私は横田基地が安全で無害だと言っているのではない。個人的な厳しい経験がなかっただけだ。


 この本を買ったきっかけは、毎年一回くらい海老名や厚木に仕事でいくのだが、昼ごろ歩いていたら、おそらく厚木の基地に離着陸していると思われる軍用機の音が凄かったからだ。そのとき歩いていた場所が工場地帯ということもあって、遠慮なく低空飛行しているのかと思った。

 しかし本書によれば、米軍基地が集中している沖縄では、そこかしこで遠慮会釈がないらしい。恒常的に騒音・振動に悩まされる生活というのは、私も短期間なら経験があるが、心身にこたえる。まして、空の上から部品やら本体やらが落ちてくるおそれに、曝され続ける厳しさというのは当方の想像を超える。事故だけでなく、事件も多い。

 米国の日本に対する態度も、だんだんと「言うこと聞かないと、ただじゃおかないぞ」という傾向が強くなってきたという実感がある。ただ一つの大国にのみ、すがりっ放しというのは、外交・軍事の世界では危うくないか。そういう点を、もう少し勉強しなければ。国民投票までに。




(おわり)




葉桜が好きです (2018年3月27日撮影)



































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