おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

バカ円盤 (20世紀少年 第720回)

 第21集の141ページ目、カンナたちが円盤の動向を調査・分析する場面が始まる。氷の女王一派は自由に野外活動ができるようになっている。カンナが投降したときの約束が守られているのか? 約束を守るような連中か。そもそも”ともだち”とカンナは友好裏に別れたわけでもないのだが、もはや”ともだち”はカンナたちなどに興味がないのか。

 円盤が雲間から現れては飛び交い、ガッツボウルの屋上で双眼鏡を持った観察チームが大童だ。南東、南西、北西の3方向から各一機。一体、何機いるのとカンナは叫んでいるが、後に製造元のヤン坊マー坊が言い交しているように、この3皿で全てであった。円盤は都内に、それも特に環七沿いに張り巡らされた壁の内側全域に赤いペンキを降り注いでいる。その意図や如何に。


 また、都内各地に散開した現場組からは、渋谷や池袋が真っ赤になっているとの速報が入っている。これらの報告と143ページ目に出てくるカンナたちが作成した地図の被害地の位置は、当たり前だがよく一致している。私の場合、地図を見逃すことができない。まず、湾岸の晴海あたりの区画がきちんと描かれているし、環七沿いの壁もしっかり描かれているので、だいたいの縮尺も分かる。

 三方向から来襲した円盤の飛行ルートも矢印3本で書き込まれている。3機とも壁の外からある一点、すなわち新宿あたりを目指して飛んだらしい。ガッツボウルは新宿にある。そこからサナエは曙橋まで、カツオは歌舞伎町まで歩いたし、かつてヴァーチャル・アトラクションに出てきた神永社長の名刺の住所も新宿であった。


 千代田区から文京区まですべて赤ペンキという報告。地図には山手線と東京駅が書いてあり、その左上の皇居の北側にある千代田区一帯に丸印と斜線が描かれているところをみると、小学館はまたしても標的にされたらしい。その北側にある文京区や北区や荒川区が、北西から来た円盤の被害を受けている。南東からの円盤は品川六本木から溜池まで、アークヒルズあたりを襲った。池袋や渋谷、目黒や品川は南西から来た円盤の被害を受けたのだろう。

 カンナは一人でも多く助けたいと言う。だが地下水道の抜け道はわずかに5本、壁の中の人口は推定50万人から100万人。いざというときに、これでは逃げ道が足りないと彼女の苦悩は深い。しかも不思議なことに円盤は毎回同じルートを飛ぶ。これは予行演習だとカンナは解釈している。「なぜか”ともだち”は、今度ばかりは計画的なのよ」と円盤を見上げながら彼女はつぶやく。


 ということは、これまで”ともだち”は計画的ではなかったと彼女は考えていることになる。彼女の父親は少年Aのころ「世界征服と人類滅亡計画」を立てて、後任ともども着々と計画を実行しているかにみえないこともないが、カンナの評価は低いな。後日この評価の低さが彼女の考え違いを招くことになる。”ともだち”の仕掛けた壮大な罠だったのだ。

 さて、他方で男たちはガッツボウルの建物まで赤ペンキにまみれて掃除が大変であり、一人が空を見上げて「バカ円盤、今度は白ペンキまきやがれ」と怒鳴っている。バカ円盤とは素敵な呼び名だが、白と混ざったらピンクになるだけだぜ。そこにバイク隊が戻ってきた。みんな真っ赤だが、一人だけ体の前側だけ被害のない青年がいて、単なる偶然かもしれないが、しかし逃げ場所を必死に探しているカンナはこれに着目した。彼は湾岸を走っていたという。



(この稿おわり)




外勤先にて。なんとなく落合長治に似ていたものですから...。 
(2013年5月11日撮影)



 「でも あいつは しくじった」  キャンディーズ 「わな」



































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