おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

鏡よ鏡 (20世紀少年 第491回)

 
 先日、ネット上に面白い意見があった。ろくでもない内容のブログを書くならば、せめてスクロールせずに読める分量にとどめよというものです。一理あります。小欄の拙文などは、長いときなど数回スクロールしないと最後の写真までたどり着かない。

 だが、この意見も少し的外れなところがある。そもそも、この私のものも含めて、ほぼ全てのブログのほぼ全ての記事は、そもそも第三者にとって中身が元々「ろくでもない内容」である。


 プロの物書きではない者が、好き勝手に言語情報や画像を発信できるようになった以上、当然の副作用なのだから、スクロールぐらい我慢しましょうよ。ほんの一昔前まで、子供が書く文章が広く人目に触れる機会というのは日常的には皆無に近く、「20世紀少年」にも出てくるように、学級新聞か文集ぐらいだった。

 クラス全員が漏れなく参加できたのは文集だけであり、そこに万博に行くと書いてしまったフクベエは、取り返しがつかないことになっている。第16集の第3話は「鏡のむこう」というタイトルになっている。鏡といえば白雪姫。


 ディズニーの改ざんに騙されてはいけない。ネットでは、原作に忠実な和訳を読むこともできる。女王が「白雪姫は千倍も美しい」と鏡に言われてしまったとき、姫はまだ7歳である。白雪姫は王子のキスで蘇生したのではない。女王の最期は無残としか言いようがない。

 フクベエが書いた日記から、第3話は始まる。日付は「8月11日 ①」となっている。ただし、後にフクベエは8月28日に8月31日の日記を先日付で書いているので、必ずしもこの日が11日とは限らない。ともあれ、文集に書いた預言のシナリオに沿い、フクベエ少年は8月10日にソ連館、翌11日は朝から並んで、3回目のアメリカ館に行ったことになっている。


 なお、活字のほうの「①」はたぶん誤植か、印刷が不可能だったからだろう。中の縦棒は丸に上下で接している。これは「晴」を意味する天気記号。なお、〇は「快晴」で、◎は「曇」。気象庁のサイト、「天気記号表」にそう書いてあります。

 フクベエ日記によると、8月11日の北摂地方(大阪万博会場は摂津の北部にあり、古来こういう呼び方をされていた土地らしい)は、晴れていたことになっているのだ。ネット情報によると(よくまあ、こんなものまでアップした人がいるものだな)、1970年8月11日(火)の大阪は、9時、12時、15時とも☀、最高気温は33.2、最低気温は23.7。


 日記の次の場面は服部家の玄関先が描かれ、続いて屋内で鏡台に向って座っているフクベエが出てくる。彼はなぜかナショナルキッドのお面をかぶっている。サダキヨから取り上げたままだな。そして、お面を外してみた。「顔、あるよな...」とつぶやいているから、幸い今回は、のっぺらぼうではなく、ちゃんと映っていたらしい。

 そのあとの彼の一人芝居は気味が悪い。「君は...誰? サダキヨ? くく、違うよ、くく」と笑う。「君は...カツマタ君? くくく、違うよ」と笑う。ここで彼がサダキヨとカツマタ君の名前を出した理由は、ごく自然に考えれば、彼の周囲にナショナルキッドのお面をかぶる習慣がある少年が二人いて、一人がサダキヨであり、もう一人がカツマタ君であることをフクベエが知っていたからであろう。


 自分がその二人ではないということを鏡に問い合わせて確認しないといけない精神状態というのは、そろそろお医者に診てもらったほうがよい段階だと思うのだが、親御さんは夏休み中、自宅に閉じこもっている息子の変調に気付かなかったのだろうか? 

 さらに彼は鏡に向かって、「じゃあ、君は誰?」と質問している。白雪姫の義母の鏡と違って、三面鏡は何も語らない。重ねて「君は誰だ?」と問うてみたところ、返事は意外なことに家の外から聞こえてきた。「ハットリくーん」と忍者のように呼ばれてフクベエは驚いた。




(この稿おわり)





百日紅(2012年9月17日撮影)





























































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