おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

包帯巻きの”ともだち” (20世紀少年 第234回)

 前回に引き続き、幹部の出世物語。長髪の優男の功績は、まず何と言っても諸星さんを殺して、”ともだち”がキリコに接近するにあたっての邪魔ものを消し、続いて敷島教授の娘を誘惑、さらに、”ともだち”がキリコを口説くマニュアルを提供している。万丈目にも高く評価されていたので、それゆえの昇進であろうか。

 もっとも、第19巻で、ともだち暦3年にケンヂと会った際、彼はロボットを作ったのも、ウィルスをばらまいたのも俺だと自慢しているのだが、ケンヂに「リアリティーねえわ」と、あっさり嘘を見抜かれている。粛正すらされず、地方に飛ばされたということは、所詮、小物だったのだろう。


 ヤマさんはどうか。実績で言えば問題ないように思う。チョーさんの”絶交”、キリコが持ち込んだ情報の握りつぶし、蝶野刑事の捜査状況の把握、ほかにも警察内部で、さぞかしお役に立つ活躍をしたことだろう。ただし、それまでスパイだったのに、国連表彰に出るとは豪胆ではないか。

 当時、警察内部には、まだ”ともだち”色に染まっていなかった人も多かったろうし、血の大みそかで殉職した同僚も大勢いたに違いないと思う。おそらく、2001年の段階で、それまで国家権力の各所で潜伏活動を行っていたチョーさんや、ユキジの税関での上役などは、職場でも正体を現して堂々と出世街道を歩み始めたのだろうな。


 それも、”ともだち”一派が世界を救った英雄になったからこそできたことである。第8巻に戻れば、国連表彰の場において、万丈目のやつが控えめにして感動的なスピーチを行っている。後のヨシツネのそれより、はるかに達者で、”ともだち”のPRなどは、わざわざビデオまで準備して用意周到なことだ。

 ここで「全人類の絆」として紹介されているのが、顔全体や身体のあちこちを包帯でグルグル巻きにされた”ともだち”の姿であった。2011年の「今年の漢字」は、私はいろいろ訳があって気に入らないが、この「絆」であった。こういう言葉を乱発する人間は警戒が必要であると思っている。


 ミイラ男のようなビデオ内の”ともだち”は、「手をとりあって、このままいこう、愛する友よ」と気色悪く語り、国連の会場を沸かせている。そこでビデオが切れて、実はこれが、2014年にコイズミがPCで再生した録画であったことがわかる。「これが全部、ウソ?」と、彼女もまだ半信半疑の様子。

 ところで、ともだち暦3年に、空飛ぶ円盤の墜落事故で死亡した”ともだち”は、フクベエとそっくりな顔立ちで、マルオが思わず「整形か」と叫んでしまったほどであった。もしも本当に他人と瓜二つに整形したのだとしたら、大人になってから顔面の大手術をしなければならない。顔は当面、包帯巻きだろう。このビデオにフクベエのグルグル巻きを映す必要はない。


(この稿おわり)


嫌な奴の話題のあとは、気分転換に花の写真。
(2010年3月22日撮影)



希望の轍(今朝撮影)