今月9日のブログで「おまけ」に書いたとおり、その前日の8日にジョン・レノンの追悼チャリティー・コンサートに行ってきました。そこで誰かが、ソロ時代のジョンがカバーして歌った「Stand by Me」を演奏したのだが、イントロのアレンジはジョンのような生ギター(これも古いか。アコギというのかな、今では)ではなく、オリジナルと同様のベース・ギターのソロから始まるものだった。
この曲のオリジナルは、ザ・ドリフターズである。念のため、いかりや長さんのバンドとは別物で、アメリカの黒人バンドです。そのリード・ボーカルだったベン・E・キングが歌い、越路吹雪がカバーして日本でもヒットしたのが「ラストダンスは私に」という曲である。
男に戻る決意をしたブリトニーさんが、女としての最後のダンス相手に選んだのは蝶野刑事であった。この場で他に選択肢がなかったのも事実だが、ブリトニーさんは、男として選ぶならカンナ、女として選ぶならと言いながら蝶野刑事の顔を指差して、「ありがとう、素敵な刑事さん」と云い終らぬうちに撃たれた。背後から素人の女を射殺するとは卑劣な。
ブリトニーさんは、ダンサーの夢を諦めるくらいなら死んだ方がましだと思っていたのだが、カンナに「生きていれば、いつか踊れる」と言われて覚悟を決めた矢先だったのに。そういえば、第7巻では神様が小泉「凶子」に、「長生きしろ、ボーリング・ブームはまた必ずやってくる」とケンヂに言われた話を伝えている。さすがは親代わりの叔父と姪、いいこと言うときは表現まで似ている。
ブリトニーさんも最期に良いことを言っている。カンナについて、「あのコだっていろいろ大変みたいなのに、ホントに良いコ」と涙を溜めている。ニューハーフとしての人生も辛いことが多かろう。弱者は対人関係に敏感なのだ。蝶野刑事は、「俺のこと信じていないけどな」と不満そうだが、ブリトニーさんは「信じているからあなたに任せて行ったんじゃない」と応じている。
暗殺者の標的は目撃者ブリトニーと、知り過ぎた刑事蝶野の二人であった。したがって、たまたま犯人に近い方にいて背中を向けていたブリトニーさんが先に撃たれてしまったのである。カンナが最終的に蝶野刑事を信用しようと判断したのは、ブリトニーさんを射殺した巡査が、蝶野刑事を次の標的に定めたのを見て、蝶野刑事の置かれた立場が分かったからだ。敵の敵は味方である。ブリトニーさん最後の置き土産であった。
(この稿おわり)