おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

死んだら、ただじゃおかない     (20世紀少年 第178回)

 友民党本部から駆けだして、ユキジを助手席に乗せて車を走らせるモンちゃんは、第7巻の209ページで、ケンヂをトランシーバーで呼びだそうとするのだが(携帯で話しながら運転をしてはいけない)、戻ってきたのはオッチョの声だった。

 米軍払下げのボロボロの対細菌用の防護服は3セットしかないため、モンちゃんとユキジは待機していてくれという要請であった。米軍はそんなものを、まだ持っていたのか。ベトナム戦争枯葉剤散布で使ったものかな。ケンヂからは、「モンちゃん、ユキジをたのむ。」というメッセージが届く。


 さあ、ユキジが怒った。モンちゃんに車を出せと迫るが、モンちゃんは断る。「オッチョも言ってたろ。お前は、俺たちの最後の希望だって...」とモンちゃんは語る。そう、オッチョ「も」なのだ。モンちゃんとで思いは同じです。本当に3人分しかなかったのか知らないが、ユキジが断念したところをみると、方便ではないか...。

 ユキジの声が無線機から20世紀少年たち皆に伝わる。「オッチョ、マルオ、ケンヂ。あんた達、生きて帰らなかったら、ただじゃおかないから...。」


 この脅迫を受けてトラックの中では、なごやかなひと時が流れた。「おっかねー。」という声は誰かわからないが、続いて、ケンヂ「ユキジがただでおかないってことは」、オッチョ「ほんとにえらい目にあうぞ。」、マルオ「こりゃ、絶対に」、ケンヂ「死ぬわけにはいかないな。」と言って、みんなで笑った。

 3人は生還したため、えらい目に遭わずに済んでいる(ただし、ユキジには、だが)。彼女にいくら感謝しても足りなかろう。しかし、そこに細菌の雨が降って来て、冗談を言っている場合ではなくなった。トラックと防護服で防ぎきれるか心配だ。細菌の噴射はラジオによると5分間隔。この5分の間に、マルオのトラックは「バケモノの股ぐら」に突入した。


 トラックの荷台の扉を開けて、巨大ロボットを真下から見上げたケンヂとオッチョが見たものは、ケンヂによれば「なんだ、こりゃあ」であり、のちにオッチョが用いた表現によれば、「あきれて言葉もなかった」という代物であった。設計者の敷島教授は評価を下げてしまった。ここで第7巻が終わる。


(この稿おわり)



背の低いセイタカアワダチソウ(2011年11月17日撮影)