おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

リモコン考     (20世紀少年 174回)

 第5巻の186ページから188ページにかけての数か所に、巨大ロボットの絵がある。ケンジに向かって斜め左から進んできている。実際、ケンヂがいる場所あたりから、この道路すなわち明治通りを見下ろすことができる。ロボットの位置は新宿3丁目と新宿4丁目の交差点の中間地点である。4丁目交差点の斜めの横断歩道もきちんと描いてある。

 この位置と進行方向からすると、巨大ロボットはやはり靖国通りをひたすら歩いて来て、新宿3丁目の交番の前で左折して明治通りに入ったのだ。後に新宿駅南口前を通過しているので、新宿4丁目で再び左折して甲州街道国道20号線)に入ったことがわかる。

 
 オッチョから緊急連絡を受けてケンヂがビルの上から見下ろすと、巨大ロボットは確かにまだ動いている。彼は一言、「フクベエ...」とつぶやいた。フクベエの「犠牲フライ」は失敗に終わったようである。ケンヂはマルオに連絡を取り、ダイナマイトをここに運ぶよう要請する。

 友民党本部では、モンちゃんとユキジがケンヂを加勢すべく駆けだすが、オッチョはモニター室に残り、拳銃を撃ちまくって「あのロボットはどこで動かしている?」と迫る。脅された男は相変わらずヘラヘラ笑いながら答えた。ロボットに「操縦席のようなものが見えませんか?」と。


 ケンヂのもとに辿り着いたマルオは、フクベエの身を案じているのだが、ケンヂは「あそこに...。見ない方がいい」と制止した。さあ、この判断はどうだったろうか。先を急ぐケンヂの気持ちも分かる。戦友のむごい遺体を見せたくないという心情も、もっとものことであろう。

 それでも、13階から落ちたとて、必ずしも死ぬとは限らない。実際、このモデルのデパートの周囲は、街路樹が散在しているのだ。息があるかもしれない。それに、リモコンも壊れたとは限らない。第一、リモコンが壊れたからといって、本体が停止する保証はない。リモコンもいろいろあるだろうが、例えばテレビを観ている間に、テレビのリモコンが壊れても、テレビの映像が消えるわけではない。


 ケンヂはマルオに行かせるべきであった。そうしていれば、フクベエと忍者ハットリくんのお面の男は、大変な窮地に立たされたはずである。まあでも、過ぎたことは仕方がないな。マルオがトラックの運転手を買って出て、ケンヂと二人で死地に向かう。この二人は、ともだち暦3年にも同じようなことをしなければならないのだが、今は知る由もない。

 社内でマルオがカセット・テープをかけている。「フクベエがよくかけてたカセット」だそうだ。「70's Rock」と貼り紙がしてある。車のデッキから流れ出た音楽は、「ガーガー♫」という擬音語しか描かれていないが、無線機で聴いていた証人の神様がコイズミに語るところによれば「20世紀少年」であった。マーク・ボランの低音のリフ。昼の放送室。


(この稿おわり)



私の誕生月、11月になると、咲く花も少なくなる。ゼラニウムふたつ。
(2011年11月18日撮影)