第7巻の第7話は、脱獄囚ショーグンが漫画家角田に対して、また同時に神様が小泉響子に対して、それぞれ2000年の血の大みそかに起きた出来事について語る場面から始まる。そこに至るまでの経緯は、のちに触れる。
ショーグンはその渦中にいたのだから何が起きたか知っていて当然としても、神様はカンナのお守をしながら、地下水道を逃げ回りつつラジオを聴いていたのだが...。まあ、そこは神様だから、一部始終を夢で見たのであろう。そういえば、あの日は無線機も持っていたな。
124ページ目に、ケンヂら7人が巨大ロボットの方向に移動しているシーンが出てくる。交通手段はバイクにユキジ、トラックにマルオとヨシツネ、残りの4人は後続の乗用車に乗っていたらしい。
道には血まみれの死体が、たくさん転がっている。それを見たヨシツネが道に跳び下りて吐いてしまい、やむなく一行は車を止めて道に降りた。そのときケンヂは思い出したのだ。「よげんの書」に彼が描いた「きょだいロボット」は、搭乗して操縦するのではなく、鉄人28号やジャイアント・ロボ同様、リモコンで動かすタイプだったことを。
兵力の逐次投入は最悪の愚策であると、司馬遼太郎は「坂の上の雲」で旅順ほか多くの場面で繰り返し指摘している。例えば、わが国の合戦史では、最終的に勝ったから良かったものの、徳川家康が関ヶ原で危ない目に遭っている。彼は一軍を率いて東海道を進んだが、最大兵力の中山道軍を任された秀忠は、信州上田城で真田親子の足止めを食って遅刻した。
結局、家康は、敵軍の三成よりも少ない兵数で戦わざるを得なくなった。しかも、石田の西軍が関ヶ原に先着し、優位に布陣したあとで戦場に辿り着いている。まともに戦ったら、おそらく負け戦であったろう。しかしどうやら勝敗は、すでに戦術や武力を超えたところで決まっていたようだ。
7人の勇士たちも、ここで離散してしまった。統率者たるケンヂが、リモコンの操縦に適した高い場所を求めて、あてもなく一人で駆け出してしまい、オッチョは勝手にユキジのバイクで、友民党本部にでかいアンテナがあると言い残して走り去ってしまった。オッチョの方がまだしも計画的だな。新宿には高い場所が山ほどあるのだから。
フクベエとヨシツネは走ってケンヂを追い掛け、ユキジとモンちゃんは乗用車でオッチョを追う破目になった。作戦も何もあったものではないが、仕方がないな。敵の居場所が分からないのだから、まずは探し出さないと、どうにもならない。一人残されたマルオは、トラックの運転を担当していたばかりに、ダイナマイトの見張り役になった。
十数年後、ユキジとオッチョは、再び一緒にリモコン探しをすることになるが、いずれも骨折り損のくたびれ儲けになってしまう。まあ、それは先の話で、次のシーンは珍しくモンちゃんとユキジの二人きりの会話が描かれている。次の回で触れます。
(この稿おわり)
私には空飛ぶ猛禽類の写真を取りたがる癖がある。
トンビを撮るのは楽だ。元の場所に戻ってくるからな。
(2011年10月5日撮影)