第2巻の150ページ、ケンヂとお母ちゃんの会話に移る。ケンヂは先ほどキリコの部屋で見つけたばかりの、「同じ計画」に関するワープロ打ちの手紙について、これは何かと問いただすのだが、お母ちゃんも知らない。
ただし、話の勢いで、諸星さんが駅で飛び込み自殺したことをケンヂは初めて知る。お母ちゃんが言うには、自殺などするような人ではなく、ホームで誰かに突き落とされたなんて話さえ出たと言う。
ここでケンヂは、ともだちマークを想起している。さきほど姉キリコと、ともだちとの間に何らかの関係があったことを知ったばかりで、その姉と親しかった男が殺されたという噂まであったと聞いては、さすがの彼も不気味な連想をせざるを得ないところまで来てしまったのだ。
その次の場面では、すでに触れたキリコと諸星さんの最後の会話があり、諸星さんは遠藤酒店のある商店街を徒歩で去ってゆく。そして、おそらくそのまま駅に辿りついている。この駅が、ケンヂたちが生まれ育った町の最寄りの駅であろう。
このブログの開始当初、私は20世紀少年たちの故郷の町を特定したいと意気込んで書いたのだが、たぶん無理だろうと今では思う。作者がそれを避けているのが明らかだと思えてきたからです。
とはいえ地理好きとしては気になる。諸星さんが入って行った駅の看板は、「○ヶ谷駅」と読める。東京は結構、凹凸のある土地柄で、都心の地名にも「谷」とか「橋」とかが付いているのも少なくない。すぐに思い浮かぶだけでも四ツ谷、千駄ヶ谷、市ヶ谷、雑司ヶ谷、探せばまだまだあるだろう。
件のプラットフォームは地上にあるので、おそらく地下鉄ではなく(東京の地下鉄には地上駅もあるが)、JRか私鉄か。このホームや電車や駅舎にある看板や表示のデザインなどを見れば、鉄道好きならどの駅がモデルになったか分かるかもしれない。ただし、あくまで絵のモデルだろう。手がかりにはならない。
諸星さんを突き落としたらしい男は、この駅の近くにある「南口センター街」という、都心とは考え難い名前のバス停で、偶然なのか計画どおりなのか分からないが、敷島教授の娘と会う。敷島教授の一家は、ケンヂのコンビニの近所に住んでいたことがチョーさんの捜査結果で分かっているから、やはり、この駅はケンヂの街に近いはずだ。
私は仕事の関係で、週に何回かJR市ヶ谷駅を利用する。下にその写真を掲げるが、第2巻157ページの駅と少し似ていなくもない。まあ、こういう姿の駅は至る所にあるだろうが...。市ヶ谷は、血の大みそかの夜に巨大ロボットが通過しているので、行き合わせなくて幸いであった。
(この稿おわり)
市ヶ谷駅遠望。あまり似ていないか...。(2011年7月5日撮影)