おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

鉄人28号もどき   (20世紀少年 第46回)

 第1巻の話題も残すところ、あと二つ。201ページに、ともだちマークが大書された重そうな扉が開いて、初登場の男が工場か倉庫のような建物に入ってくる。この場面では読者に名前は知らされないが、万丈目である。

 マサオが大学で配ったのと同じような、ともだちマークのTシャツを着た若者数名に囲まれて、ある「完成品」を検品に来た様子である。彼が気にしているのは「”ともだち”がこれを気に入ってくださるかどうか」なので、どうやら”ともだち”の子分であるらしいとの印象を与える。実際、番頭さんであった。


 万丈目が若い製作者たちに、「君たちは”ともだち”に見せてもらったはずだ。彼の心の中にあるヴィジュアルを、彼の友力によってね。」と語りかけている。

 この「友力」(ゆうりき)という言葉は第2巻にも出て来るのだが、キーワードかと思いきや、その後、影をひそめてしまったように思う。このブログを書きながら読み返しているので、おいおい再確認するつもり。


 問題は、この「完成品」には、まともな設計図がなかったようで、ともだちの心の中のイメージが、彼の持つ「友力」によって、製作者に示されたものであるらしい。図面通りに出来上がったなら、万丈目が外観を点検したり、これなら気に入って下さるだろうなどと言う必要もない。

 しかし、正直言って、こんなことを真面目に分析していてもアホらしくなってくるだけだな。ともあれ、万丈目が見たのは巨大な鉄仮面のようなものだ。金属かどうかは確認しようがないが、血の大みそかの大爆発から”ともだち”の身を守ったのは、おそらくこのマスクであるはずだ。この絵にも重量感がある。


 鉄仮面と書いたが、この代物は、一応、顔であるらしい。ともだちマークが一つ目小僧的に使われており(そもそも、オッチョには悪いが、ともだちマークが不気味なのは悪用されたからだけではなく、一つ目だからである)、人を小馬鹿にしたような口元が憎たらしい。そして、その尖がった鼻っ柱は、鉄人28号を思い起こさせる。

 しかし鉄人28号そのものよりも、それと似た絵しか描けなかったケンヂ少年の責任だが、このマスクの元絵は、すでに185ページ目に出て来る、缶の中にあったケンヂ画の「きょだいロボット」であろう。少なくとも鼻は似ている。巨大でもある。


 その後も、この鉄人28号もどきの顔は、ともだちマークと並んで、ともだちの団体や友民党のオフィシャル・シンボルとなる。マークはオッチョから、マスクはケンヂから盗んだものだ。つくづくオリジナリティーというものがない頭目であり、団体なのである。

 この顔面は後に万博のモニュメントに取り付けられて登場するが、その際は塔の内部が話題になるので、それについては、またそのときに書くことにしよう。殺人団体にこんな出来の悪いコピーを作られたのでは、泉下の岡本太郎も爆発的に怒っているに違いない。



(この稿おわり)


わが家から見た東京の朝焼け。
右端に東京スカイツリーの影がある。 (2011年7月13日撮影)




ついでに、今度は夕焼けの写真。
沖縄本島の上空にて。 (2011年7月17日撮影)










































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