おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

恋の季節     (20世紀少年 第17回)

 竣工したばかりの秘密基地に向かって歩く史上最悪の双子、ヤン坊マー坊が歌っているのは、このころ大流行したピンキーとキラーズの代表曲、「恋の季節」である。大変なヒットになったので、早速、彼らを主人公にしたテレビ・ドラマが始まったのを覚えている。

 「わーすれられないの」以下の歌詞は、歌声のふきだしが重なっているのだが、これはピンキーのリード・ボーカルとキラーズのコーラスが、実際に輪唱のごとく重なっているのを上手く表現したものだ。

 ちなみに、当時の子供は遊び道具も少なかったので、工夫の一つに替え唄を作るという無料の遊戯があった。私はこの曲において、「恋は私の恋は」という箇所を、「コイは池の鯉は」と替えてみたのだが、あとが続かず力尽きた。


 ヤン坊マー坊は、二人合わせた名前の会社がスポンサーとなった天気予報(昔は気象情報などと気取らなかったのだ。よく外れたが。)の背景に流れるアニメーションと主題歌の登場人物。本家の方は、可愛い双子の少年である。

 もっとも私は子供のころ家族や親類に「マー坊」と呼ばれていたので、毎日のようにテレビで呼び掛けられるのは、あまり愉快なことではなかった。少なくとも去年(2010年)まで、この「ヤン坊マー坊天気予報」は続いていた。見て驚いた。おそるべき長寿番組である。


 幸い、この漫画のほうのヤン坊マー坊は、開業早々の秘密基地の存在に気付くことなく、とっ捕まえたトンボの羽根をむしって去ってしまう。あのねのねによると、赤とんぼの羽根を取ったらトウガラシになるそうだが、真夏の草地だから多分、赤とんぼではないだろうな。この一件に限れば、双子を責めてはいけない。昔の子供は残酷なことも、たくさんやったのだ。

 
 基地の少年たちは腰を抜かすほど怯えてしまったのだが、さすがオッチョだけは立ち直りが早く、「ここは俺たちだけの基地だ。俺たちだけのマークを作る」と宣言して、例のマークをさらさらと書き上げて仲間に見せる。

 これにより、読者には、ともだちマークが1969年の夏の草陰で出来上がった、由緒ある作品であることが分かる。そして、本来、この印を知っているのは、本当の友達だけのはずだった。


(この稿おわり)

台湾の山川草木 (2007年2月28日撮影)