おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

常磐線 祝全線開通  (第1283回)

2011年に発生した東日本大震災のあと、年に一度、被災地を巡ることに決めて九年目。津波原発事故で一部区間が不通になっていたJR常磐線が、全線開通しました。本年3月、コロナ禍が日本中、世界中を覆い始めていたころの嬉しい報せでした。

被災地も前回からは東日本に限らないことにして、去年は中越地震が起きた新潟県にお邪魔しましたが、今年は常磐線を措いて他に無し。ただし、いつもは現地に行って知らない方にお会いし、当時やその後のお話しを伺うことにしてきましたが、今年は東京者がお喋りに出かけてはまずい。


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阿武隈川


そういうわけで、大人しく常磐線の仙台と上野の間を、一人で電車旅をすることに致しました。2020年11月18日、仙台発です。実は途中の水戸で観光のため一泊しようと考えていたのですが、疲れが出たのと昼食を終えて眠くなり、水戸を乗り過ごして、特急ひたち号の次の停車駅は終点上野。

常磐線は拙宅のバルコニーから、僅かですがビルの合間に走っているのが見えますし、月に何度か乗車する身近な路線です。しかも、新入社員のとき社宅があった松戸と北千住を往復していた、初めての通勤列車でもある。


当時、つくばエクスプレスができる前で、乗車率200%と言われていたころです。各駅には乗車する人を押し込める尻押し係の駅員さんが詰めておりましたし、着ぶくれして混雑がひどくなる冬に二回、内圧であの分厚い電車のドアの窓ガラスが、外側に向け割れて、ガラスの欠片が吹っ飛んだのを見ました。

また、うろ覚えですが、その前の学生時代に旅行で北海道にいったとき、上野から乗った今は亡きブルー・トレインが、深夜に地震で停車したのが、いわき辺りだったとアナウンスの内容を記憶しているので、それが正しければ東北本線ではなく常磐線を走っていたことになります。


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今回は途中下車はしませんでしたので、小一時間、車窓に張り付き、窓の外の様子を見ていました。あくまで一回限りの通過ですが、人が少ないという印象が強かったです。平日の昼前、天気は快晴で小春日和でしたが、徒歩の通行人も自転車も見えない。

たまに車や人が見えるときは、決まって工事用の車両らしきものに、作業着姿で仕事中の方々です。特急が通過する駅は、ホームに数えるほどしか人影が見えない。ここでの暮らし、あるいは、今ここから離れたままの人たちの暮らしはどうなっているのでしょう。


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幾つかの駅で撮った写真です。真ん中の空と木々の写真は、大野駅の近辺です。同駅がある大熊町には、東京電力福島第一原子力発電所の施設の大半が残存しています。今なお新たなトラブルのニュースが時々、伝わって参ります。自然現象に例えるなら、活火山。目に見えない世界で何が起きているのか。


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沿線に積まれているこの黒っぽい袋の中には、何が詰め込まれているのか分からない。化石燃料の火力発電を止めるのも地球環境には大いに結構な話で、この今も続く事故さえなければ、素直に賛成できるものですが、でも電力が足りなくなったら、どうするつもりなのだろう。

この旅行(仙台で一泊二日)に出る少し前、東北電力女川発電所の2号機の再稼働が決まったと聞きました。女川も三年ほど前に参りました。津波の爪痕がまだ残っているのを見た。国内の電力需要だけでなく、また、二酸化炭素排出量の削減だけでなく、地元の生活や経済も考えなければならないのが今の日本です。


ともあれ、常磐線の開通は、大きな前進の一歩だと考えます。いったん放出された放射線物質は、いつまでなのか知らないけれど、私が生きているうちは残るだろう。だが元はと言えば、東京が福島から電気を買っていたのだから、文句は言わない。

「金が落ちる」とよく聞くが、本当にその金は、すべての生活者や避難者に、まんべんなく落ちているのか。まず違うだろう。コロナ禍で、私達もいろいろ勉強しました。落ちるところにしか落ちない。紅葉とススキの季節の写真で終わります。


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上は沿線、下は仙台市内  (2020年11月18日撮影)




(おわり)








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仙台市歴史民俗資料館にて  (2020年11月17日撮影)





 When I was a little bitty baby,
 my mama would rock me in the cradle
 In them old cotton fields back home.
 
  ”Cotton Fields”  Creedence Clearwater Revival
























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