おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ベルギー戦を終えて  (第1165回)

 トーナメント緒戦の対ベルギー戦も、ライブではごく一部しか観られなかった。当日(つまり試合後に)急な仕事で、それがまた何人かの職業人生を左右する会議だったので、睡眠不足の老いた頭で参加する訳にはいかなかったのです。それでも早めに寝付いて、明け方に目が覚めてTVをつけてみたら、後半のアディッショナル・タイムに入るところでした。

 決着がついた時点で、二度寝しました。悔しくて眠れないのが、あるべきファンの姿なんだろうが、何だか緊張感が抜けたように寝た。翌日、録画を観ました。良い試合だったなあ。乾のゴール、すごかった。さて、残りの話題を書き残します。予選通過の命運がかかっていた、ポーランド戦の前から始めます。


 私はサッカーが詳しい先輩相手に、ポーランドには勝てないかもしれないと申して不興を買いました。そう考えた理由は、すでにポーランドの予選敗退が決まっていたので、もう勝ち点を狙う必要はなく、本来やりたい奔放なサッカーで来るだろう。そうなれば、これまで日本が研究してきたのとは違うチームと戦うことになります。でも相手は、こちらを知っている。不利だし、ランキングもはるか格上の相手だ。

 そして毎度のごとく、大外れ。日本チームが6人も代えてきたので、お互い知らないチームになった。おまけに、ポーランドが日本の終盤の時間稼ぎに付き合い、一勝という手土産を持ち帰る選択をしたため、ダルなゲームになった。そして日本は陣容を元に戻して、ベルギー戦に臨みました。


 いつもワールドカップでは、他の国同士の試合もよく見ては、勉強しています。勉強というのも妙だが、サッカーを楽しむ材料や視点を増やすという、欲張りなだけの話です。今回は、縦パスというものに注目いたしました。ベルギー戦でも、それまで余り繋がりが良くないように思えた(私だけかな)、柴崎と原口が決めてくれた。

 申すまでもなく、日本人は身長・体重、体格・跳躍力において、まだまだサッカー先進国の大半に劣る。これはすぐにどうすることもできない所与のハンディキャップみたいになっています。その割に、日本チームの伝統的な作戦の柱は、クロスとセットプレー。空中戦になることが多い。実際、ベルギーが次々と挙げた二点も、コーナー・キックでした。


 縦パスは、見ていると諸外国はよく使います。それも、前方でこちらを向いて待っている攻撃陣に対してばかりではなく、背中を向けて敵陣に走っている味方の前に放る。野球の外野手がやる背走と似ています。練習すれば、途中でボールから目を離して走っても、落下点が背中で分かる。そのまま脚をひょいと伸ばしてシュートしています。けっこう上手くいっている。

 ゴール・キーパーも、斜めから飛んでくるコーナー・キックの放物線は、ボールの距離もスピートも立体的に把握しやすいのではないか。されど、敵の攻撃が正面から来ると、かえって照準を定めにくいと、ゴルゴ13も申しておりました。


 今回の日本の最終戦では、地味でしたが、この縦パスを短く丁寧に決めたのが、ベルギーのGKです。後半の時間切れ寸前、本田のコーナーを直接、捕球した。日本チームも、カウンターが来るとすぐに思ったはずです。

 通常、カウンター・アタックは、キーパーやディフェンダーが大きく前に蹴りだすところから始まると思います。でもあのとき、GKはスローイングを選んだ。真っ先に走り出した味方に着実につながるように、アンダースローでボウリングのように転がしました。「まずい」と思った。


 このキーパーは、前半でも同じようにボウリングをやっていました。無くて七癖。しかし、裏をかかれたようです。日本の動きが一瞬止まったような感じがしました。気のせいかもしれませんが。これと似たことを、日本もセネガル戦の二点目で演じている。柴崎、長友、乾とつながったチーム・プレーのお手本のような技でございました。

 あのときの長友の短いパスの切れ味が良かった。手元に録画が無いので印象だけで語りますが、これもベルギーのサヨナラ・カウンターと同様、バスケでいうフェイントのようになり、敵の守備陣の動きが、つんのめるように止まったとき、乾の強打が飛びましたから、ほとんど敵は跳べなかったように思う。記憶が違っていたら、ごめんなさい。でも使えますよね、これからだって。


 それにしても、試合終了後の選手のインタビューが、むごかった。中継してもらって何だけれど、負けた直後に肩で息をしている選手たちに、マイクロフォンを突き出すとは、テレビ局は何様のおつもりか。選手も二人ほど、「これで、もう、いいですか」と言って途中で去りました。これが敗者にして勇者に接する態度か。

 また、海外のマスコミやサッカー関係者も、老獪で言いたい放題だから、気を付けた方が良いと思います。例えば、ベルギーのカウンターの起点になった本田のCKについて、あの時間帯に真ん中の真上に打つ奴があるか、と外国には騒々しい連中もいるようだが、真に受けない方が良いです。それを単純に翻訳しただけで、意見も添えずに情報を垂れ流すようなサイトは信用に値しません。


 あの時間帯に延長戦を避けて、全力でかかって来られたら堪らないと思った者らが、日本を牽制していると考えた方がいいです(そういう意味では、パス回し批判も同様か)。CKの前に本田が放ったFKについては、黙っているのが良い証拠。あの手のボール・コントロールのうまさは、我が国のお家芸でございます。

 冒頭の話題で、私がポーランドは怖いと述べたときに使った言い方は、彼らはもう次の大会に向けて戦い始めており、日本戦は最初の強化試合になるはずだというものでした。舌戦も含めて、すでに次回大会は始まっている。遠藤と本田の後任は育てていますか。





(おわり)




上野寛永寺の鬼瓦  (2018年6月3日撮影)








 私のチームでは、ゴールを守る者が最初のアタッカーであり、
 アタッカーは最初のディフェンダーである。  

         − ヨハン・クライフ






































.