おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

宇宙飛行  (第939回)

 本日はかつて好きだった天文に関する雑談です。先日のニュースで、わが国は3年以内に月面着陸の宇宙船を飛ばす計画であり、また、日帰りの宇宙旅行も早ければ本年内に開始するのだという。後者は弾道飛行というもので、放物線を描いて落ちてくる。これは飛行というより、乗り物ごと、ぶん投げると言った方が実態に近い。

 この日帰り旅行は、交通費1,100万円だそうだ。もう少なからずの予約が入っているというから驚きです。金はある所にはあるもので、往々にしてろくな使われ方をしない。われら下々の者は、わずかな額でも思わぬお金が手に入っただけで、しばし幸せになれるのだから恵まれているのかもしれない。


 この漫画には天文関係の話が時々出てくる。最初はドンキーの月。神様の民間人初の宇宙旅行。”ともだち”の火星移住計画。ドンキーの発言の中では、アームストロングが船長、オルドリンは大佐、僕はコリンズが中佐という肩書で出てくる。アポロ計画のころの宇宙飛行士は軍人だった。

 先日聴講した職業の適性に関する講演では、戦闘機と旅客機のパイロットに求められる資質は全く異なるという面白い話があった。戦闘機乗りは死ぬか殺すかという極限状態に置かれる。それに耐える精神力と、生きて還るには撃ったり逃げたりの腕も必要だ。

 旅客機は安全第一である。しかも、現代の大型旅客機は離着陸や緊急事態以外は、ほとんど自動操縦だから、パイロットに求められるのはコンピュータを正確に操作する能力、つまりSEやプログラマーができないと空を飛べない。


 アメリカの宇宙事業では、軍事目的のほか用もないのに月まで行って喜んでいた時代は命がけであり、戦闘機と実質的に同じ能力の持ち主がパイロットとして必要だった。スペースシャトルの時代になって、ようやく科学者その他が宇宙船に乗れるようになったのは、上記の飛行機と同じ事情による。

 ちなみに、米原万里「魔女の1ダース」によると、ガガーリンもカモメのテレシコワも、サブ(予備)の飛行士だったらしい。ガガーリンは行くべき人が直前に怖くなって辞退し、テレシコワは予定者が生理になってお鉢が回って来たとのこと。事実かどうかは兎も角、プロの通訳の彼女がいい加減な話を書くわけがなく、そういう噂があったことは間違いないのだろう。


 神様が宇宙旅行から羽田に戻ってきたときの服には、「Venus and Mars」と書かれたワッペンが貼ってあった。私が子供のころの子供向けの本では、人類の移住計画は火星よりも、むしろ金星が有力候補だったような気がする。理由は地球から近距離なのと、金星は地球とサイズが同程度なので重力もさほど大差ないだろうだから。ここまでは穏当な考えだ。

 しかし、現実は甘くない。当時すでに分かっていたことなのだが、金星はあの美しい輝きとは裏腹に、分厚い二酸化炭素で覆われており、漫画にも出て来たが地球温暖化と同じ原理により、しかも程度問題が半端ではなく、人類には耐えきれない高温・高圧の世界である。


 対する火星は、太陽から離れているので寒いし、ウェルズの昔からケンヂとチャーリーの会話に至るまで、タコ型の火星人が先住しており、運河もあるとの報告があり、レイ・ブラッドベリの「火星年代記」も怖い予言小説で、どうも快適な住環境とは思えない。

 それなのにカツマタ君はなぜ少年時代から大人になっても、火星移住計画にこだわったのだろう。これは以前もこのブログに書いたのだが、こじつけでも何でもいいから理由を探すとしたら、”ともだち歴3年”、まともな世の中が続くなら2018年に火星が地球に大接近する。行ってみたいねえ。フォボスダイモスは火星の夜空に浮かんで見えるのだろうか。


 大接近といえば1985年から86年にかけて、話題のハレー彗星が地球に近づいた。この彗星の公転周期は悠長な話で約75年もあり(もっとも彗星にしては短いほうらしい)、概ね日本人男性の平均寿命と同じだから、一生に一度のチャンスと言ってよかろう。子供のころ散々あおられていたから楽しみにしていたのだ。そして彗星は我が二十代半ばに約束どおり来た。

 しかし、北半球からはほとんど見えず、しかも私は最接近の1986年初頭は仕事が忙しい時期に重なってしまい、とうとう拝見できずに終わった。このころ関西地方には異常な重力場が発生したのだろうか、タイガースが阪神甲子園球場においてバックスクリーン三連発を打ちこんで優勝したのが85年だった(当時の野球における超常現象については、玉木正之さんの著書に詳しい)。


 漫画「20世紀少年」は友情と、その欠落についての物語でもある。今日は後段でこれを書きながら思い出した曲の歌詞を二つ並べるが、みんなどうして「friend」が好きなのだろうか。教祖(かな?)は命名の妙を心得ていたのだ。

 最後におまけ。映画「20世紀少年」では、レナちゃんの黒子(クロコではない)が漫画と違って胸元に二つではなく、腕に三つ並んでいる。学生が「オリオンぼくろ」と呼んでいたが、「神々の指紋」や毛利家の家紋でおなじみのオリオン座の三つ星に由来する。この星座の左脚に輝くリゲルは、宮沢賢治よだかの星」に出てくる「西の青じろいお星さん」だろう。今でもまだ燃えています。





(この稿おわり)





長田弘さんによれば、魂の形をした雲があるのだという。合掌。
(2015年5月13日撮影)







 Sitting in the stand of the sports arena,
 waiting for the show to begin.
 Red lights, green lights, strawberry wine.
 A good friend of mine follows the stars.
 Venus and Mars are alright tonight.


        ”Venus and Mars”   Paul McCartney and the Wings
 




 スポーツ・アリーナの席に座り
 史上最大のショーの開幕を待つ
 赤と緑の照明 イチゴのワイン
 わが良き友は 星を追う 
 金星と火星は 今宵もお元気







 いつか その胸の中も 曇らぬように right away
 追いかけるのさ my friend


    「浪漫飛行」  米米CLUB 懐かしの1997年



















































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