おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ポルターガイスト (20世紀少年 第772回)

 スピルバーグの初期の映画に「ポルターガイスト」というのがあり、シリーズ化されて3作ぐらい作られた。私はなぜかこの第一作が好きで、三回ぐらい観たと思う。ドイツ語で「polter」は騒々しい、「geist」は精神。超常現象の一つで、見えない何かが悪さをするらしい。

 独語「geist」は英語のゴーストと語源が一緒なのかもしれないが、知り合いのドイツ語が話せる人によると幽霊とか妖怪とかいった意味ではなく、前向きなプラスの価値を持つ「精神」であるらしい。ともあれ、映画「ポルターガイスト」は日本の幽霊のような恨めしい相手に対し、復讐のために出てくるような健気な連中の話ではない。罪もない家族が散々な目に遭う。


 なぜこの映画をいきなり引き合いに出したかと言いますと、外見上は常盤荘で似たようなことが起きているからだ。ロボットの襲来に気が付いたマライアさんと角田氏、金子氏がカンナを起こしに来たところ、娘はあられもない姿で窓を開け放している。そっちにはロボットがいるはずなのに。

 部屋の中は映画「ポルターガイスト」と同様、小物から家具調度に至るまで、物理法則を無視した動きをしている。カセットやレコード、人形や置時計などの軽いものは宙に浮いて飛び回っている。ベッドや箪笥まで浮き上がっており、カーテンや枕も部屋の中を乱舞している。カンナのサイコキネシスが覚醒したのだ。


 涙を浮かべたカンナが「やめて」と叫んだ頃、小学校の校庭では跪いたままのケンヂが、”ともだち”に向かって「俺、全部覚えている」と言った。話を合わされては遊びにならない”ともだち”は「え...」と絶句。それからケンヂは畳みかけるように「俺、全然忘れたことないよ」と言う。

 疑う根拠もないが、これは本当だろうか。バンドを止めた理由もオッチョが作った俺達のマークもユキジの存在さえ忘れていたようだったが。まあ確かに罪悪感は根強く残るからなあ...。少なくとも、最近、すべての記憶を取り戻したと言っていたから、ここで嘘をついているのではあるまい。


 妙なことに”ともだち”は「え、あれ?」と慌てている。「おまえが変なこと言うから、リモコンの調子が...」とうろたえながら、リモコンのバーをガチャガチャやっている。モニターを見てはいないので、リモコンそのものが動かなくなったのだろう。

 それにロボットはこのあと再び動き出すので故障したわけではない。あくまで、”ともだち”のリモコンが動かなくなっただけだ。原因はケンヂが変なことを言ったわけではなく、少し離れたところからエネルギーの全てをぶつけてきたカンナの念力によるものであることを”ともだち”は知らない。


 ケンヂは相手の動揺をものともせず、きちんと謝るべくサングラスを外そうとしている。他方、常盤荘では全力を使い果たしたカンナが、再びマライアさんの腕の中に崩れ落ちてしまい、部屋の中を飛び回っていた小物がみな床に落ちた。リモート・コントロールを失ったロボットは停止した。

 この急ブレーキで大変な目に遭ったのは、カンナは知らずや乗客のオッチョおじさんである。彼は乗り込んだものの、ロボットはすべて”ともだち”の遠隔操作で動いていたようで、悪戦苦闘していたようだ。そこに急停止だから、機械類に頭をぶつけたか、左の額から流血している。しかし、まだ手動に切り替えることができない。オッチョは上空に円盤を認めた。



(この稿おわり)





ジャスミンの赤い実 (2013年6月22日撮影)





今日もおまけ。




































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