おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

エボラ出血熱     (20世紀少年 第19回)

 
 若いころエボラ出血熱に関する本を読んだことがある。外国人の医師が描いた迫真のドキュメンタリーを翻訳した単行本だった。私の若いころというと1980年代か90年代であるが、書籍のオンライン・ショップを眺めても、それらしい本が見当たらない。ただし、NHKが1997年に出版した本があり、取材の対象となったのは1995年のザイールでの流行だったらしい。

 第1巻第2話は不吉な死体の絵から始まる。特に外傷もないのに「身体中の血が流れ出ちまっている」というから、第1話でケンヂのお母ちゃんが新聞で読んでいた病気を思い起こさせる。


 3人の刑事が初動調査を行っており、チーフ格はヤマさんである。第2巻75ページ目の電話の内容からして、まだ彼はこの時期に、これが何事なのか、何故ここで患者が出たのかを知らなかったのではないかと思う。

 エボラ出血熱と、”ともだち”らが開発した生物兵器には幾つかの共通点がある。すなわち、全身からの出血、猿も発症、1990年代後半にアフリカで流行、高い死亡率、そして国立感染症研究所のサイトの顕微鏡写真で見ると、エボラウィルスは知恵の輪(これも古語か?)のような形状をしており、山根やキリコの研究所で作られたウィルスと良く似ている。


 刑事の一人によると、妙な機械があふれかえる部屋で怪死したこの男は、金田正太郎、24歳、お茶の水工科大学の大学院生。この人は、かなり先の第20巻183ページで敷島教授の話に出てくる「金田というリモコン操縦が天才的にうまい私の教え子」のことだろう。

 1997年に殺されたというから平仄が合う。”ともだち”の命令を断ったのだろうというのが教授の推測である。教え子のほうが筋を通したのだ。


 ネットは便利である。金田正太郎で検索してみると、「鉄人28号」を動かしていた男の子の名がこれであるという。また、鉄人を開発したのが敷島教授であるらしい。

 私が彼らの名前に覚えがないのは、「鉄人28号」のマンガもアニメも見ていないからで、おそらくメンコで知っただけだからだ。第3巻の129ページ目で、サダキヨが持っているようなメンコだ。いつか詳しく書く機会もあるだろうが、1960年代の田舎では、民放は1局かせいぜい2局しか映らなかったので、系列が違うと情報量が極端に減る。


 その点、90年代に一世を風靡した大友克洋の「AKIRA」に出てくる健康優良不良少年の金田なら記憶に新しい。そうか、あの金田の下の名も正太郎というのか。

 「AKIRA」と「20世紀少年」にも共通点は多いが、いずれまたカンナの「覚醒」のところで触れようと思う。ともあれ、すでに殺人ウィルスは山根の手で完成され、実験も成功した。あと半年後に21世紀が来る。


(この稿おわり)


暗い話題が続いたので口直し。ご近所の白い紫陽花です。
















































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