おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ケロヨンの披露宴     (20世紀少年 第20回)

 
 第1巻の第2話「カラオケ」は、うわさのケロヨンの披露宴から始まる。正確にはケロヨンと嫁さんが、お色直しに入り、着替えを終えて再登場する場面からだ。ちなみに私は、ケロヨンという蛙のヒーロー(?)が居るらしいことは知っていたが、そのアニメを見たことはない。浦沢さんがお詳しいのは、やはり首都圏の生まれ育ちでいらっしゃるから、当時でも民放のチャンネルは一通り揃っていたのだろう。うらやましいね。

 式場では早速、口の悪い幼馴染たちと新郎との間での舌戦が繰り広げられるが、ここで「きれいな嫁さん」とか「残りものには福があるぞ」とか、ケロヨンに誉められてニンマリと微笑んでいる御新造さんも、よもやわずか3年後に亭主の女遊びに手を焼くことになるとは思いもよるまい。


 漫画は白黒だから推測の域を出ないが、どうやら新婦はお色直しで白無垢に替えたらしい。私は式典の習慣や和服の作法に何の知識も関心も持たないが、式服に関連して、最近の読書で面白い一文があったので紹介します。杉本鉞子「武士の娘」の一節、著者が娘たちに姉の着物などを見せては昔話などをする場面より。

 「次の箪笥には、姉の嫁入衣裳が入っていました。白無垢は里方に死ぬことを意味し、緋の衣裳は夫の家に誕生することを象徴しているのです」。(中略)「式後、白無垢は、しまっておいて次の機会を待つことになっています。祖母も母も最後の旅立ちの時には、経帷子の下に花嫁の時の式服を着て逝きました」。その当時、白は死の色であり、白無垢は婚姻の式の最初に着るものであったようだ。


 白無垢という単語で検索すると、主にブライダル産業のサイトなどでは、白は神聖、純潔、どんな色にも染まりますという花嫁の覚悟を表しています云々という解説が載っている。

 しかし、どうやら杉本さんが生まれ育った明治初年の越後長岡では、白無垢は実家での命の終わりを表現する死に装束であり、鮮やかな色の衣装に替えることで、夫の家での新しい生活が始まるという意味合いを込めていたらしい。もちろん現代は現代のしきたりや好みがあって良い。それに、どうせケロヨンだし。


 マルオの「オタマジャクシ発言」を受けて、「いよいよ、あいつ、蛙帝国つくる気か?」と茶化しているのが、ヨシツネの初登場の姿。この蛙帝国については、次回に譲る。同席のケンヂは、夏休みの宿題ができない少年時代から成長の跡が見られず、事ここに至っても友人代表のスピーチを作文しており、しかも途中でともだちマークを書いて、友人連中に見せている始末、しかも上がり症だから当然ながらスピーチはしどろもどろになる。

 ケンヂの「ケロヨン君におかれましては(引用者注:本名ではない)、せめて家庭の平和と町内の平和くらいは守っていただきたく・・・」という祝辞について、家庭の平和はともかく、親子2代でともだちと戦った仲間はケロヨンだけだし、なにより人類存亡の機に際し、ケロヨンは北米大陸で町内どころか世界の平和のために立ち上がることになるのだ。


(この稿おわり)



近くにある教会にて。結婚式をやっているのを見たことがないが、芙蓉の花が色とりどりに美しい。

























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