かつて駐在員として長期滞在していたカンボジア国で、終わりつつある内戦を祝うかのような国政選挙が、何十年かぶりに行われた。1990年代の終わりごろだったと思う。
投票率は99%を超えた。識字率が低かったので、投票用紙は候補者の顔写真だったか、サッカーボールなどのアイコンだったか、とにかく字を書かなくても印をつけて選べる仕組みを国が考えた。
期日前投票も在外投票も、まだ制度化されていなかったのではないかと想像する。長い行列ができた。二重投票を防ぐため、急いで身分証明書を作った。地方は数え年なので、誕生日は1月1日ばかりで笑ってしまった。
さて、この国造りの選挙とくらべ、我が国の投票率は圧倒的に低い。先日のメルケルの後任選びになったドイツの投票率も、70%を超えた。責任感もなく、期待も悩みもしない者が多いのか。
この国では投票率が低いと、自由民主党の得票率が上がるという相関関係があることは、たぶん誰も否定しまい。子供のころの記憶なので、話半分に聞いて頂きたいが、三連休の真ん中の日が投票日になったことがあった。
前回の総選挙では、当日の日曜日に用事があったため、久しぶりに期日前投票に行った。平凡な毎日において、投票所は数少ない聖なる場だ。厳粛な気分になる。だが宣誓書を書くのを忘れて、注意された。
しばらく前に、「投票は厳粛なものだから、投票日当日に行うべきだ」という、意味不明のネトウヨ的ツイートを複数、見た。なんとしてでも投票率を下げたいらしい。
バカはうつるのでご用心。さて、「期日前投票」という言葉を見るに、通常われわれが「投票日」と呼んでいる日は、「期日」(投票期日)である。この日までに投票の権利が行使できるの意。
これは個人的な意見ではなくて、公職選挙法でお確かめいただきたい。
したがって、期日前投票が始まってからは、どの日でも投票してよいのは当然のことで、期日前であろうとなかろうと、投票した日が投票日だ。
そうであるならば、投票期間とでも言うべき日々を、今回も迎えた。うちにも投票用紙が届き、いつしか両親がかつてやっていたように、なくさないよう所定の場所に収めてある。
10月31日(日)は、予定もないから、期日だけこの場所で投票することができる近所の小学校に行くことにするか。いかないと選管に叱られる。
(おわり)
空 (2021年10月4日撮影)
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