おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

それでも、日本人は「戦争」を選んだ  (第1925回)

ブログを引越し、そして久しぶりの更新です。引越も更新も間が空いたのは、まず私自身の情けない体調のせいで、長いこと体調不良に苦しみ、僅かな仕事しかできなかったこと。今回はその病床で読んだ本の紹介です。

遅れた理由はもう一つあって、憲法改正の話がちっとも進まないからだ。この政権は、思うに危ない遊戯を覚えた。何も憲法を書き換えなくても、好き放題、法律を作ることができる。近ごろの働き方改革上水道、漁業、そして倍増といってよい防衛費を含む予算案。

肝腎の改憲については、かつて「スケジュールありきではない」と彼が言っていたとおり、スケジュールありきが決まり、2020年施行だそうだ。来年の2019年は、そこに至るまでのプロセス、すなわち国会での動議、議決、国民投票、公布を済ませておくつもりなのだろう。


そして今、さっぱり改憲の中身の話が展開しないのは、2019年7月下旬に行われる参議院議員選挙まで、黙っているという戦法でございます。口を開くと敵が増える閣僚ほか有力議員を抱えて御苦労さまです。

参院選は、解散がない参議院の議員を選ぶから、これで負けると(具体的には三分の二の味方を抑えないと)、将来にわたって大半な不利になる。一々、覚えていないが、過去、参院選で大敗して倒れた政権は少なくありません。

そんな中で、憲法に(特に安全保障に)関連するニュースとして、上記の防衛費の他に、沖縄の埋め立て地の問題と、空母の導入という話題がありました。沖縄はもう少し勉強しないと、「自然破壊は反対」としか言えません。これだけでも、選挙のときの一判断材料として、その強引さも含め、十分なものですが、今回は見送り。


本日はもう片方の空母のことを、知る限り考える。軍事は分からないと言ったままでは、今の自民党改正草案の国防軍や、取りあえず書き加えたい自衛隊の話になっても、全く付いていけないことになってしまう。

先の大戦時、空母を擁した海軍の部隊は、航空艦隊とか機動部隊とか呼ばれていました。いわば「航空艦隊」とは、その機能や構成を表し、「機動部隊」とはその性格・目的を示していると思います。


航空艦隊とは、空母に航空機を載せて浮かぶ飛行場となり、いまは戦闘機ばかり話題になっていますが、真珠湾にお出かけの際は、爆撃機も載せました。空母がなければ、我が国土からの航続距離の範囲内での行動となりますが、空母があれば、あとは燃料次第で、どこにも行ける。

この燃料がなくて困ったのが太平洋戦争です。日本の地下には活断層こそ豊富にありますが、何故か燃材料となる石油や鉄鉱石などの重要な金属の埋蔵量が余りに少ない。当時、石油の最大の輸入先だったアメリカと戦争して、やはり負けた。


また、仮に燃料は心配なくても、本当に「どこにでも行ける」かどうかは、つまり、移動用の「機動部隊」となれるかどうかは、敵次第の面があり、空母は単体では戦闘力も防御力も低いため、これを敵襲から守る他の攻撃的な兵器がたくさん必要です。

敵はきっと、空中、海上、海中から、三次元で攻めてきます。それぞれ、先の戦争では戦闘機、駆逐艦、潜水艦などで防御した訳ですが(これは今でも大きく違わないはず)、日米ともに空母は実によく沈みました。相手が真っ先に狙ってくる。だから、まだまだ買い物が続くはずです。カード地獄が待っている。

そして戦争中であろうとなかろうと、食い物が要る。食糧の自給率は3割あるかないか。3割として、全国民が体重を7割減らすわけでもなく、3割の人口が生き残るのでもなく、力づくで奪えるごく少数の者が奪う。


掲題の書籍は、十年近く前に世に出た。著者は東京大学文学部の加藤陽子教授。私と同じ1960年のお生まれ。間もなく即位なさる現皇太子も同い年。同世代というのは過去の出来事に関する知識や解釈に共通部分が多くて、それだけでも分かりやすい。

文学部が戦争を語る時代です。同書には上記に私が書き散らした物量比較という観点から、なぜ「それでも」なのかを論じているほか、また、あえて重要人物を絞り、そのキー・パースンがどういう人柄・考え方で、事に望んだかを議事録や日記から探る。


この本を読めば、何故それでも日本人が戦争を選んだのか、滔々と語りつくせるというような、魔法の杖ではない。されど挑戦者は、千里の道も一歩からという格言の重要さを忘れてはなりません。前に書いた近所の小さな本屋さんで買った文庫本です。改めて御礼。

アメリカ軍の使いっぱしりを戦争と呼ぶのでない限り、日本には戦争をする資格はありません。近代戦に耐える力はない。生身の人間を武器弾薬に使うところまで戦い続けてしまう程、外交能力もない。こんな防衛策で進んで行って良いのかどうか、来年は最初に最大の論点が来ると思います。乞うご検討。



(おわり)



この季節の拙宅からみた夜明けです  (2018年12月20日