おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

不戦の誓い  (第1386回)

 公私ともに忙しくて、更新が遅れました。理由は他にもあり、先週末の選挙に疲れた。選挙結果にではない。その前後に繰り広げられた与野党の政治家、マスコミ、言論人、ネット・ユーザーらの罵詈雑言の嵐に疲れた。一言ぐらい言い返さないと気が済まない。衆愚選挙であった。無力な自分も含めてです。

 あのアメリカ人でさえ、ときには自粛するネガティブ・キャンペーンの連続だった。しかも、私は Twitter のような匿名の書き込みは追っていない。それでも、このありさま。この選挙に生活が懸かっている人ばかりならともかく、この投票率だ。


 ともあれ、結果はしっかりと出た。投票者の主な政治的な関心は、きっとお金の話(経済成長と社会保障)、そしてミサイルなのだろう。民間の調査では、第9条への自衛隊の明記も、緊急事態条項の新設も、支持者のほうが多いらしい。今の時代に明治150年などと、はしゃいでいる国家が頼りになると思っているのだろうか。

 総理とオバマ大統領がハワイのオアフ島で共同宣言を出してから、まだ一年経っていない。現時点では、なお首相官邸のサイトに、「米国訪問 日米両首脳によるステートメント」という題名で掲載されている。

 安倍さんが何と仰ったか、いちばん大事な部分だと思うところを転載します。真珠湾攻撃で沈めた戦艦「アリゾナ」の追悼式典のあとだったため、その印象が語られ、次にこう続く。適宜、レイアウト等は変えますが、文章はそのままです。


 その厳粛な事実を思うとき、かみしめるとき、私は、言葉を失います。その御霊(みたま)よ、安らかなれ――。思いを込め、私は日本国民を代表して、兵士たちが眠る海に、花を投じました。

 オバマ大統領、アメリカ国民の皆さん、世界の、様々な国の皆さん。私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々の御霊に、ここから始まった戦いが奪った、全ての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった、数知れぬ、無辜(むこ)の民の魂に、永劫の、哀悼の誠を捧げます。

 戦争の惨禍は、二度と、繰り返してはならない。私たちは、そう誓いました。そして戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら、不戦の誓いを貫いてまいりました。戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は、静かな誇りを感じながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。

 国会での野次や、秋葉原での野次返しと比べ、はるかに格調が高い。動画も残っているので、影武者でなければ、間違いなく我が行政府の長である。戦争の惨禍は二度と繰り返さないし、不戦の誓いはこれからも貫いて参る。

 今この両国家が、近所の海や半島で何をしようとしているか知らない。戦争に侵略と自衛があるという議論は重要なのかもしれないが、実際の戦争が、どちらかの成分が100%というのは、よほどの事態だろう。ナチスポーランド侵攻とか、ソ連チェコスロバキアアフガニスタンで行ったこととか。


 自衛なら可という簡単な話ではない。それは確かに、やられっぱなしでは私も腹が立つし怖い。他方で不戦の誓いは、ベトナムのような非道な戦争への参加を避ける手立てにはなる。いま私たちは、これからもひたすら米国その他のお誘いを断り続けるか、それとも、付き合い続ける方針に転換するのかの岐路にある。

 憲法の第二章の題名は、「戦争の放棄」である。前文には、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」したとある。そして、上記のステートメントで断言したこと。これらを変えずに、第9条に自衛隊の条項をどう位置づけ、どう表現するおつもりか。




(おわり)




上野の日没  (2017年10月9日撮影)