おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ここからはお金の話  (第1365回)

 憲法の第七章は「財政」です。前回、改正草案では、ここに追加新設の条項が多いと書きましたが、さっそく冒頭の第84条からお出まし。いつものように並べます。

【現行憲法

第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。


【改正草案】

(財政の基本原則)
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。


 今の第83条は、国の財政を国会が決めるべしという大原則を立てている。現在、大雑把にいうと、国家財政のうち収入にあたる「歳入」の約三分の二は、税金(国税の税収)であるから、国民(ここでは広く法人等も含む)が納めているものである以上、国民の代表が決めなければならない。

 残りの三分の二が、国債だ。これは第85条に出てくるので、そこで触れます。さて、国会が何を決めるかと言うと、例えば税率とか控除制度とか、そしてこれが問題だが、何よりその使いみち、「歳出」である。しかし第83条は、財政処理の決め方を決めているので、中身の問題には直接、規定していない。


 しかしながら、改正草案では何か心配事でもあるのか、新規の第2項を入れ込み、財政の健全性を確保すべしと言い出した。それは、そのとおりです。さらに、得意の「法律の定めるところにより」が付いている。

 付き合いも長くなってきたので、改正草案における「法律の定めるところにより」というのは、憲法から離れ、「あとは立法府で決めるからよろしく」という意味だと実感しています。ただでさえ、財政・税制・社会保障制度に関する法律は無数にあるはずだ。さらに何をしたいのか。


 そもそも私には、「健全性」とは具体的に何を意味するのかも不明です。これまで、財政の健全化という言葉が良く使われてきたのは、人口と産業が都会に集中し、疲弊した地方の公共団体の財政危機に関連してのことだったと思う。

 現状の人口構成と出産率では、この問題は容易に解決しない。ITの普及により人口集中は止まり、地方が活性化するという与太話は、もうすっかり鳴りを潜めた。これからも地方財政の健全化、つまり赤字体質からの脱却は深刻な課題として残る。この東京都でさえ、国民健康保険料は、ものすごい金額なのだ。


 それでは、国家財政も、地方同様に危機的な状況にあると理解して宜しいか。一昔前に流行った「プライマリー・バランス」という聞こえの良い掛け声は、どうなった? 

 昭和型の公共事業は、少なくとも第二次東京オリンピックまでは続けるようなので、泉下のケインズも喜ぶだろうが、そうなると税率を上げ、公的年金の受給額を削り、行政を安値で民間委託するという今の健全化方法論を強化するという意味でしょうか。それを憲法に書きたいのだろうか。勘違いでありますように。




(おわり)





安物デジカメでのツバメの撮影は、なかなか大変なのです。

(2017年6月14日撮影)


































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