第52条と第53条には、ちょっと久しぶりにという感じだが、改正草案に追加の記載がある。次の第54条には、ちょっとどころではない追加があるのだが、先を急がず、両条の違いを見比べてみる。
【現行憲法】
第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
【改正草案】
(通常国会)
第五十二条 通常国会は、毎年一回召集される。
2 通常国会の会期は、法律で定める。
(臨時国会)
第五十三条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。
召集という言葉が気に入らない。憲法に文句言っても始まらないが、どうしても赤紙のイメージがついてまわる。何人もの親戚や、祖父の工場で働いていた若者が戦死したと聞いて育った私としては、強い抵抗感を感じる。
これはNHK放送文化研究所のどなたかも同意見だったようで、次のように説明されている。
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/088.html
召集… 日本の国会、旧日本軍に限定する。
<例>国会の召集 (旧日本軍の)召集令状
招集… 地方議会、外国の議会、自衛隊、外国の軍隊など、一般的には、この表記を使う。
<例>会議を招集する 予備役の招集
言葉遣いはともあれ、改正草案では第52条に通常国会、第53条には臨時国会というタイトルが付いている。
これも初めて知ったのだが、憲法も国会法も「常会」「臨時会」という言葉を使っており、こちらが正式な法律用語なのだ。しかし、今では政治家も報道機関も、躊躇なく「通常国会」「臨時国会」という。分かりやすいといえば分かりやすい。
通常は150日が原則であるが、ときどき延期される。改正草案は、この条文に追加して、「会期は法律で定める」とした。誰かが勝手に決めるよりはマシだが、もう国会法に書いてあるのに。
次の第52条の追加項目は、「要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない」。わたくしには意味不明。臨時だから遅くては困るので期限を設けるのは異論ないが、何故のんびりと20日以内なのだろう。
なお、「総議員の四分の一以上」というのは、野党でも要求できるということだ。以前、TPPだったかで揉めた。しかし、与党が「通常国会にするから」という理由で拒み、臨時国会にならなかったという訳の分からない駆け引きに使われた観がある。
ちなみに、「国会を召集すること」は、天皇の国事行為として憲法に定めがある。だから、内閣ができることは召集の決定であり、召集そのものは、上の人が下の人を集めることなので、天皇の行為です。総理が「召集します」と言ってはいけないわけだ。
それにしても、司法府も行政府も、一年中、あんなに働いているのに、なぜ立法府だけ原則期間限定なのだろう。思うに、会期が終わると審議も中断する。与党にしろ野党にしろ、時間稼ぎしてタイムアウトという作戦を練るのに便利だからか。確かに、むやみやたらと立法されては敵わないけれど。さて、次が問題だ。
(おわり)
伯父が召集され戦死したテニアンの海
(2017年1月12日撮影)
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