おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

4月9日 医療提供体制  (第1251回)

民主主義のための勉強だと、大見え切ってのブログですから、個人でできるところまで調べ、分からない点は人なり本なりから情報を仕入れます。4月7日に緊急事態宣言が出され、さる5月7日に延長されました。それぞれの「概要」は内閣官房のサイトに載っています。

第一回の4月7日の宣言において、「緊急事態の概要」を引用します。今回はここに出てくる「医療提供体制のひっ迫」という、あまり安心できそうにない(緊急事態なのですから当然ですが)事柄がテーマです。


3.緊急事態の概要
新型コロナウイルス感染症については、
・肺炎の発生頻度が季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められること、かつ、
・感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ、急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきていることから、
国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、かつ、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと認められる。

現状認識・判断根拠ともいうべき二点のうち、一点目は病気の話で肺炎が発生しやすいという重症化のおそれです。二つ目は、サイエンスというより、医療現場の態勢・医療行政にかかわることのようです。最近の報道で聞くところの「コロナ病床が足りない」という話もこの一環でありましょう。NHKの報道より。


以下は5月11日付の記事で、今後必要となりそうな入院患者向けの病床が約3万余、一方で実際に確保されているのが1万4千余。半分弱です。それに地方差があることから、厚生労働省は各都道府県で、確保願いたいと要請している由。確保できないと上記の宣言にあるように、国民の健康と生活と経済に「甚大な影響を及ぼすおそれ」がございます。

さて、病床とは何だ。医療法という法律があり、まず、日常的に何気なく使っている「病院」と「診療所」(クリニック)の違い。厚生労働省の資料では、これら医療施設は病床の数により分類される。20床以上が病院、未満が診療所。病院は入院や手術をするから、しっかりしたものが要求されている(厳重な規制)。言われてみれば、近所のクリニックで胃カメラ飲んだときも、簡易な病床のお世話になっております。


次は病床の種類ですが、これも同じく厚生労働省のサイトより、法改正時点なので数字は少し古いですが、各病床の名称と総数が表になっています。いろいろありますが、コロナ病床はもちろんない。名前の印象からすると、感染症病床が近いですが、今回の感染症の場合、きっとPCR検査キットとか防護服とか人工呼吸器とか、独自の必需品がありそうです。

今日はそこまで見極められませんが、現状に目を向けますと、先ほどのNHKの報道は、5月1日付の厚生労働省データと平仄が合っています。この表の右端にある「宿泊施設受入可能室数」というのが、急きょ手配しているホテルなど、軽症者や医療従事者の宿泊施設なのでしょう。現場はかくも大変だ。


本稿の今回タイトルにある4月9日とは、緊急事態宣言が出た二日後に、二つの医学会が連名で関係者に出した文書であり、そのサイト上に公開されていますので借用しました。

感謝で始まり感謝でおわる立派な形式の内部文書ですが、内容は深刻で、いま救命医療が置かれている状況と課題の整理を目的としています。ここに緊急事態宣言にあった「医療供給体制のひっ迫」が登場しており、それに続く部分は警鐘であり、叫び声でもあるかのようだ。

この度、緊急事態宣言が行われ、その中で「医療提供体制がひっ迫している」ことにも触れられていました。医療崩壊が生じる際の最初の兆候は「救急医療体制の崩壊」ですが、これは私達がすでに実感しているところです。学会員の方からも窮状を訴える声が届いています。


外来患者と救急患者の受け入れ、迅速検査、他の疾病の患者の対応、医療従事者の防具の圧倒的な不足、そして院内感染。これらに関する当事者の生の声も、SNSやブログで探せばいくらでも出てきます。どれも相当せっぱ詰まった様子で、これらを読んだらパチンコには行けないはずなのだ。

それに、病床が足りたとしても(NHKの5月12日のニュースでは改善傾向だという)、ここに出てくる要員と必要機材が不足するなら、万全の機能は果たせない。しかし報道によれば、多くの機材が外国産で足りておらず、急な調達も間に合わない。

医療従事者が感染した場合の労災認定も、最近二件認定されましたが、全体的に実際どう運用されるのか不確かだと弁護士さんが取材に応えていました。たぶん労災であるとの挙証責任が、患者側にありそうです。


最後にその病床数についてです。私の理解によれば、政府はそもそも今年度予算の段階で、病床数・医療施設の全体数を減らす計画です。試しに「ダウンサイジング支援 病床」で検索してみると、もう何年も前からの計画で、これからも実施継続予定らしい。

確かに一般論では、人口減少と過疎化で病院・病床があちこちで余り、医療従事者も分散配置の度が超えているのなら、統合・合併・縮小等の手段で、効率化を図る必要がありましょう。すでにご存じのとおり、小中学校ではずっと前から、この縮小均衡策が進められています。


それにしても、どうやらこの医療施設のダウンサイジングは、補助金すなわち国債または税収からの金銭的支援が行われるとのことなので、かつての稲作における減反政策と同じです。これは総務省のサイトにある厚生労働省作成の資料ですが、来年度は消費財源で補助すると書いてある。その是非を問うのは私の手に余りますが、こういうときにCOVID-19 が来たわけだ。

医療崩壊という言葉を毎日のように耳にし目にし、しかもどうやら、使う人によって意味が異なるように見受けられます。かつては、公的医療保険介護保険等の財政、医療従事者の人手不足や地域間格差、医師や病院を相手取った「医療ミス」に対する損害賠償を求める民事訴訟などという時代的・体制的な話が多かったように記憶しています。


しかし今般は、先ほどのように、救急診療が機能不全になるおそれであるとか、治療薬ができても病床が足りないかもしれないとか、第一線の深刻な問題を含んでいるように思います。そして今回は医療関係だけですが、もう一つ、経済(マクロ経済も家計も)の課題もあります。これは誰がどうすればよいのか。

多分、日本だけの問題ではないはずで、国連や外国といがみ合っている場合ではない。それなのに、意地の張り合い、米中の責任のなすりつけ合い、国家間のマスクの奪い合いと、向こう三軒両隣の喧嘩のようなニュースばかりです。新自由主義グローバリズムで乗り越えられるものなのか。私は否定的な感触を持っています。

最後に少し違う観点から、私が長年、通院している内科と歯科は、評判も良いようでいつも満員なのですが、先月はいずれもガラガラでした。患者さんが来ないと内科医が仰っています。医療崩壊が、かかりつけの診療所から始めるなどというのは勘弁願いたい。



(おわり)



f:id:TeramotoM:20200410063513j:plain

不忍池 Social Distancing  (2020年4月10日撮影)






















.